「離婚後共同親権」に躍起 想像力の欠如に驚く(2024年4月21日『毎日新聞』)

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松尾貴史さん作
松尾貴史さん作

 「政治に必要なのは、言葉と想像力と、ほんの少しのお金」という書籍を出したのは、政治ジャーナリストの岩見隆夫さん(故人)だった。自分の周辺と、記号的な人間関係しか見えない人間が政治家になると、多くの国民が迷惑する。

 離婚後共同親権を導入しようと、自民党が躍起だ。衆議院法務委員会で、谷川とむ議員が「ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待がない限り、離婚しづらい社会になるほうが健全だ」という珍奇な意見を述べて物議を醸した。誰だって結婚するときは、一緒に幸せになろうと考えて夫婦になる。しかし、未来のことなど誰にもわからない。やむにやまれぬ事情や、全く想定していなかった事態が起きて関係が修復できなくなるなど、いくらでもある。ドメスティックバイオレンスや虐待だけが決定的な破局理由とは限らないし、我慢できない状態というのはその種類も程度も人によってさまざま。離婚しにくい制度などを政治家に設計されるのは国民にとって迷惑千万な話だ。

 彼は、X(ツイッター)で「愛する子どもを連れ去られない限り、連れ去られた人の気持ちはわからない。虚偽DVの汚名を着させられなければ、その辛(つら)さはわからない」などと投稿、正当化しようとしている。虚偽DVというものがどれほど社会問題化しているのかは知らねど、よほどつらい状況がなければ、子どもを連れて逃げようと思うはずがない。