「共通点は紅麹サプリ」 患者診た病院の問い合わせに小林製薬は(2024年3月30日『毎日新聞』)

日本大学板橋病院の腎臓・高血圧・内分泌内科部長の阿部雅紀医師=東京都板橋区で2024年3月30日午後2時24分、山口智撮影
日本大学板橋病院の腎臓・高血圧・内分泌内科部長の阿部雅紀医師=東京都板橋区で2024年3月30日午後2時24分、山口智撮影

 小林製薬の「紅麹(こうじ)」のサプリメントを摂取した人の健康被害をめぐり、腎臓の機能低下で3人が入院した日本大学板橋病院(東京都)の腎臓・高血圧・内分泌内科部長の阿部雅紀医師が毎日新聞などの取材に応じた。3人はいずれも腎臓の病気などの持病がない中で腎機能が低下し、2023年春ごろからサプリメントを飲み始めていた点が共通していたという。

 阿部医師によると、患者は女性で70代1人と50代2人。3人は昨年11月から今年1月にかけて、尿が泡立つ異常を感じたり、風邪のような症状で体調を崩したりしていた。病院で検査した結果、腎臓の状態を示す指標の一つのクレアチニンの数値が基準値より高く、尿たんぱくや尿潜血も陽性で「尿細管間質性腎炎」を起こしていた。

 3人はステロイド治療を行い、1週間から数週間入院。現在は快方に向かっているが、半年から1年ほどは通院して薬物治療が必要になる。

 診察時の聞き取りでは、いずれも既往歴や持病はなかった。薬の副作用が原因の一つに考えられたが、薬は常用していなかった。聞き取りの中で浮上した共通点が、紅麹サプリメントの常用だった。「サプリが疑わしい」と思い、3人目の診察直後の2月1日に小林製薬に問い合わせた。

紅こうじを巡る健康被害の経緯拡大
紅こうじを巡る健康被害の経緯

 当初は「同様の腎障害の事例は他にはない」との返答だった。しかし、2週間後の15日に詳しい説明を聞きたいとの連絡があり、22日に来院した担当者に病状や経過を説明した。病院がサプリメントの自主回収の方針を知ったのは1カ月後の3月22日の記者会見でだった。

 患者はいずれも健康診断でコレステロール値が高いと指摘を受け、改善しようとサプリメントの服用を始めたという。健康志向も高く、異常を感じてから病院受診までは早かった。

 ただ、3人目の患者はクレアチニンの数値が他の2人よりも高く、阿部医師は「発見が遅ければ慢性腎不全となり、透析が必要な状況になることもあり得た。決して軽症とは言えない」と説明する。もし心臓に持病があれば心不全の悪化などで死に至るケースもあるという。

 腎臓の病気は自覚症状に乏しく、悪化してから病院を受診する人が多いという。阿部医師は「このサプリメントを飲んで、尿の泡立ちや濁りが心配な人は医療機関を受診してほしい」と話す。その上で、問題のサプリメントが機能性表示食品として届け出されていたことを踏まえ、制度について「安全性を十分に確認してから発売してもらいたい。抜き打ち検査などで有害なものが入っていないかもチェックする必要があるのではないか」と語った。【山口智

小林製薬「紅麹」もアベノミクスの〝遺産〟か 規制緩和に議論波及(2024年3月30日『毎日新聞』)

 

講演で「成長戦略三本の矢」について語る安倍晋三首相=東京都港区で2013年6月5日、梅村直承撮影

 

 摂取した人からの健康被害の報告が相次いでいる小林製薬の紅こうじのサプリメントは、国に届け出たうえで「コレステロールを下げる」と表示していた。こうした健康食品は機能性表示食品と呼ばれる。安倍晋三元首相の成長戦略「アベノミクス」の一つとしてできた制度で、スタート時から安全性が担保されるのか懸念されていた。

 「トクホ(特定保健用食品)の認定を受けなければ効果を商品に記載できないのでは金も時間もかかり、中小企業などのチャンスが閉ざされる」。2013年6月、安倍首相(当時)が規制緩和を表明した。その2年後の15年4月、機能性表示食品がスタートした。

 トクホは、国が有効性や安全性を審査する。これに対し機能性表示食品は、…