人気お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんが、性的な被害を受けたとする女性の証言を掲載した週刊文春の記事で名誉を傷つけられたとして、損害賠償などを求めている裁判が始まり、出版社側は、「複数回の取材を重ね、真実と確信している」などとして全面的に争う姿勢を見せました。
この裁判が28日、東京地方裁判所で始まり、文藝春秋側は「女性に対して複数回の取材を重ね証言の信用性について慎重に検討したうえで松本さんに対する取材も経て確信した。同意のない性的行為は真実だ」などと訴えを退けるよう求め、全面的に争う姿勢を見せました。
松本さん側が、具体的な主張をするために女性の名前や住所、本人の写真を求めたのに対し、文藝春秋側は、「女性は、SNS上で嫌がらせを受けている」などとして回答できないと答えました。
松本さんは裁判に注力したいとしてことし1月上旬から芸能活動を休止していて、28日は法廷には来ませんでしたが、代理人の弁護士は「本人尋問が行われることになれば、出廷を拒否することはない」と話しています。
傍聴希望691人 倍率は約36倍
東京地方裁判所によりますと、28日の裁判には19席の傍聴席に対して691人が訪れ、倍率はおよそ36倍でした。
東京地方裁判所では28日午前、受付の開始前から長い行列ができていました。
東京都の40代の男性は「松本さんの番組を見て育った世代で、応援していたので早く復帰してほしい。報道が事実なら悪いことだと思うが、分からないことが多いので実際に傍聴して真実を知りたい」と話していました。
東京都の20代の女性は「被害者の女性が声をあげたことはすばらしいことだが、お互いの言い分があり、本人たちしか知りえないこともあると思うので、裁判を通して明らかになってほしい」と話していました。裁判は午後2時半に開かれます。
松本さん側「本人が出廷を拒否することはない」
松本さんの代理人の弁護士は裁判のあと、報道陣の取材に対し、「相手が誰であろうと強制的な性加害はない。どこかの段階で松本さん本人の尋問が行われることになれば、本人が出廷を拒否することはないと思う」と述べました。
また記事に記載されているほかのお笑い芸人についても「立証に必要であれば証人としての出廷をお願いする可能性はある」と述べました。
文藝春秋側「こちらで全部立証する」
名誉毀損の裁判のポイントは?
名誉毀損の裁判に詳しい佃克彦弁護士は、松本さんや被害者とされる女性が法廷でみずから説明するかどうかなどが裁判のポイントになると話しています。
佃弁護士は裁判の争点について、「99%、書かれた記事の真実性、または真実相当性になる」と話します。週刊文春の記事が真実かどうか、または真実だと信じるような相当な理由があったかどうか、という意味です。
佃弁護士は松本さん側の今後の主張について「記事で書かれた食事会があったかどうかを争うのか、それともそこで行われた行為を争うのかによって立証のしかたが変わる。行為が争点の場合、松本さん本人の供述は重要になる」と述べています。
松本さんが法廷で証言する可能性については「厳しい質問も予想されるので松本さん側からは申請しないと思うが、文藝春秋側が申請して裁判所が認める可能性はある」と話します。
一方、文藝春秋側については「可能な限りの取材を尽くして、集めた資料に照らして記事が合理的な内容であれば真実相当性があるとされ、違法とはならない」と指摘します。
今後の立証について、「取材源を表に出すことは難しいと思うが、被害者とされた女性が証人として出るかどうかが大きく影響する。当事者どうしのLINEのやり取りなど、被害者の話を支える客観的な証拠が出てくるかも重要だ」と話しています。
裁判にかかる期間については、このような名誉毀損訴訟の場合、一般的には1年半から2年ぐらいはかかると話していました。
<裁判を前に…>
松本人志さん「世間に真実が伝わり、一日も早くお笑いがしたい」
裁判が始まるのを前に、松本人志さんは「人を笑わせることを志してきました。たくさんの人が自分の事で笑えなくなり、何ひとつ罪の無い後輩たちが巻き込まれ、自分の主張はかき消され受け入れられない不条理に、ただただ困惑し、悔しく悲しいです。世間に真実が伝わり、一日も早く、お笑いがしたいです。」と弁護士を通じてコメントを発表しました。
週刊文春「今後の報道と法廷で事実を明らかにしていきます」
一方、週刊文春の編集部は「記事には十分な自信を持っています。今後の報道と法廷で事実を明らかにしていきます」とコメントしています。