宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡し、遺族側が上級生からのパワハラなどが原因だったとして歌劇団側に謝罪と補償を求めている問題で、遺族側の弁護士は28日記者会見を開き、歌劇団側が去年11月の調査報告書で確認できなかったとしていたパワハラがあったことを認め、遺族側に謝罪したことを明らかにしました。
※遺族側の弁護士と歌劇団側の双方がそれぞれ記者会見を開いて詳しい内容を説明しています。
【ライブ】遺族側の会見
【ライブ】歌劇団側の会見
<遺族側>
「上級生6人から謝罪文」
「速やかに遺族に謝罪すべきだった」
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「遺族側の主張 おおむね今回の合意書の中に反映」
「複雑な思い」
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「謝罪と補償 歌劇団と合意」
遺族の代理人の川人博弁護士は「歌劇団に求めていた謝罪と補償について合意し、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長らが遺族に対して謝罪した」と明らかにしました。
「謝罪の意義は大きい」
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「慰謝料等解決金として相当額の金員を支払う」内容で合意
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パワハラ認め遺族側に謝罪
<歌劇団側>
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上級生は手紙で謝罪
歌劇団側は、上級生の謝罪について「謝罪は手紙で行った。やり方については、遺族側と協議の上で手紙による謝罪を行った」と述べました。
「公演再開時期 少しでも早い段階で皆様にご報告」
「原因1つに特定難しいが 負担強いる運営 非常に大きな理由」
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長はパワハラと劇団員の死亡の関係について、「原因を1つに特定することは難しいのではないかと思っている。ただ、やはり何よりも過密なスケジュールの中で長時間活動を余儀なくさせて過重な負担を生じさせ、パワーハラスメントに該当する行為があったこと、それに、長年にわたり劇団員にさまざまな負担を強いるような運営をしてきたということが非常に大きな理由だと考えている」と述べました。
「行為者も自覚」
証拠をめぐる発言 謝罪
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パワハラ14件に整理し合意
阪急阪神ホールディングスの大塚順一執行役員は会見で「遺族側代理人が去年12月に会見された際、パワハラの主要な行為が15件あるとされていましたが、ご遺族とさまざまな話し合いを重ねてきた結果、最終的に14件に整理し、合意しました」と明らかにしました。
一方、15件の項目のうちどれを認めなかったという単純な比較は難しいとしています。
その上で、大塚氏は「職場におけるパワーハラスメントに該当する行為の内容や表現について遺族と話し合いを重ね、互いに歩み寄りました。それでも、宙組の上級生が行った行為について遺族からは『故意であったのではないか』とか、『ヘアアイロンを取り上げて無理やり押しつけたのではないか』という旨のお話もあったが、経緯などについてそれぞれの認識が一致するには至りませんでした」と説明しました。
また、ほかの項目についても「その事象の背景や上級生による言動の具体的な言葉や使い方とその解釈などについて一致しなかったところがありました。しかしながら最終的に先ほど説明した内容のとおり合意に至った次第です」と述べました。
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「組織風土を時代に合わせて変えず 責任は極めて重い」
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は記者会見で「調査やヒアリングなどの過程において、例えば厳しい叱責が仮に悪意はなかったとしてもハラスメントにあたることもあるという気づきそのものが劇団員にもなく、そしてわれわれが何よりもそれを教えてもいなかったということを改めて認識した。また、こうした組織風土を時代に合わせて変えてこなかったのは劇団でその責任は極めて重いと考えている。遺族のお話からも当時のご本人の心情であるとか負担の大きさに思いが至るとともにご遺族の思いを重く受け止めさせていただいてハラスメントを認めるに至った」と述べました。
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「新しい宝塚歌劇団に」
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は記者会見で「宝塚歌劇の創業時の理念は家族そろって楽しめる健全な娯楽の実現を目指すことだった。しかしながら、劇団員の尊い命が失われるという痛ましい事態は私どもに対する信頼を大きく損なうものであると深く反省をしている」と述べました。
その上で、「宝塚歌劇の理念を具現化し続けていくためには伝統という言葉で現実に目を背けるのではなく基本に立ち返って絶えず適切な形に変えていく姿勢が重要であるということを肝に銘じてまいりたいと考えている。失った信頼を取り戻しご遺族をはじめ社会の皆さまに新しい宝塚歌劇団に生まれ変わったと認めていただけるよう全力で改革に取り組んでまいります」と述べました。
「アドバイザリーボード」を設置
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は、記者会見で4月1日づけで弁護士や大学教授などが助言する「アドバイザリーボード」を設置することを明らかにしました。
そのうえで「歌劇団の独りよがりにはならないよう、劇団が進める改革の内容について専門的見地から助言をいただきながら、抜本的な改革を進めていく」と述べました。
再発防止策「着実に進めてまいります」
宝塚歌劇団の村上浩爾理事長は記者会見で再発防止策について「改革の成果や効果が一朝一夕で現れるほど甘くはないと考えておりますが、すでに着手しているものを含め、着実に進めてまいります」と述べました。
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再発防止策を説明
宝塚歌劇団の村上浩爾理事長は記者会見で「適切な管理を怠り、実効性のあるガバナンス体制を構築できていなかったことは事実だ。劇団員をはじめ、すべての関係者が安心してよりよい舞台作りに専念できるよう改革に取り組んでいく」と述べました。
その上で、再発防止策として、▼稽古スケジュールの見直しや▼劇団員の心身の健康管理体制の強化のほか、▼劇団員や関係者の意識改革や行動変容を促す取り組み、▼改革を実効性の高いものとするためのサポート体制を整備していくことを明らかにしました。
「尊い命が失われるという事態 ざんきに堪えません」
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「すべての責任が劇団にあり安全配慮義務違反があった」
「取り返しのつかないことをしてしまいました」
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は、28日の会見で「宝塚歌劇の舞台の上で活躍することを夢見て希望を持って入団された本人がどういう気持ちだったか、その活躍を楽しみにされ温かくご支援されてきたご遺族に取り返しのつかないことをしてしまいました。心よりご遺族に謝罪を申し上げたいと思います」と述べました。
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遺族と直接面会して謝罪
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は会見の中で、28日午前11時に阪急阪神ホールディングスの角和夫会長らが遺族と直接面会して謝罪し、合意書を締結したことを明らかにしました。
「深くおわび」
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長は会見で「まず昨年、宝塚歌劇団宙組の劇団員がご逝去されたことにつきまして亡くなられた劇団員に心より、哀悼の意を申し上げますとともにご遺族の方に深くおわびを申し上げます」と述べ、陳謝しました。
阪急阪神HD社長らが会見へ
歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社の阪急阪神ホールディングスは、このあと午後4時から記者会見を開くことにしています。
会見には、▼阪急電鉄の社長を兼務する、阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長と▼阪急阪神ホールディングスの大塚順一執行役員、そして、▼宝塚歌劇団の村上浩爾理事長が出席する予定です。
双方が合意
去年9月、宝塚歌劇団の宙組に所属していた25歳の劇団員が兵庫県宝塚市で死亡したことについて、歌劇団は去年11月、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする一方、いじめやパワハラは確認できなかったとする調査報告書の内容を公表しました。
これに対し、遺族側は劇団幹部や上級生からのパワハラにあたる行為はあわせて15件に上ると主張し、歌劇団側に対して謝罪と補償を行うよう求めていました。
遺族側と歌劇団側はこれまで代理人を通じて協議を進めてきましたが、その結果、双方が合意に達したことが関係者への取材で分かりました。
また、関係者によりますと、歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が28日、遺族に直接、謝罪したうえ、上級生も手紙で謝罪したということです。
遺族側の弁護士と歌劇団側の双方は28日午後4時からそれぞれ記者会見を開いて詳しい内容を説明することにしています。
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遺族主張 15のパワハラとは
遺族側が主張している15件のパワハラ行為は次のとおりです。
1:亡くなった劇団員が断ったにもかかわらず、上級生がヘアアイロンで髪を巻き、額にやけどを負わせた
2:この上級生がやけどを負わせたにもかかわらず、真摯(しんし)な謝罪をしなかった
3:上級生が髪飾りの作り直しなど、深夜に及ぶ労働を課した
4:上級生が新人公演のダメ出しで人格否定のようなことばを浴びせた
5:週刊誌の報道の後、上級生が亡くなった劇団員を呼び出して詰問し、過呼吸の状態に追い込んだ
6:劇団幹部がヘアアイロンでやけどを負ったことについて「全くの事実無根」と発表した
7:劇団幹部が睡眠時間が1日3時間程度しかとれないような極めて過酷な長時間労働を課し、過大な要求をした
8:亡くなった劇団員が所属していた宙組の幹部が「振り写し」の復活により一層過大な要求をした
9:宙組の幹部が「お声がけ」の復活により一層過大な要求をした
10:演出家が怠慢や不備により、到底対応不可能な業務を課した
11:宙組の幹部が配役表の事前開示に関し、2日連続で執ような叱責を行った
12:宙組の幹部が「振り写し」に関し、大声で宙組の組員の前で叱責を行った
13:宙組の幹部が「下級生の失敗はすべてあんたのせいや」などの叱責を繰り返した
14:宙組の幹部が幹部部屋で大声で叫び、威圧的な言動を行った
15:宙組の幹部が「お声がけ」に関し、詰問や叱責を続け、罵倒した
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これまでの経緯
これまでの経緯についてまとめました。
【去年9月 劇団員が死亡】
宝塚歌劇団の宙組に所属していた25歳の劇団員は入団7年目の去年(2023年)9月、兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかりました。
【去年11月10日 遺族側が会見】
遺族側の弁護士は記者会見を開き、長時間の業務と上級生からのハラスメントが原因だったとして、歌劇団に対して謝罪と賠償を求めました。
【去年11月14日 歌劇団側が調査報告書公表】
宝塚歌劇団は外部の弁護士による調査チームを設置し、宙組に所属する劇団員などから聞き取りを行うなどして調査を進めます。
そして去年11月の記者会見で、いじめやパワハラは確認できなかったとする一方、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする調査報告書の内容を公表しました。
会見で当時の木場理事長は「健康面などの管理をもっとすべきだった。安全配慮義務を十分に果たしていなかったと深く反省している」と述べ、去年12月1日付けで理事長を辞任しました。
【遺族側が意見書提出】
これに対し、遺族側は「パワハラが否定されたままで合意解決することはありえない」として、調査報告書の問題点を指摘した意見書を歌劇団側に提出します。
【去年12月7日 遺族側がパワハラの“証拠”公表】
去年12月の会見で、遺族側の弁護士は
▼劇団員が額にヘアアイロンを押しつけられた際のやけどの痕だとする写真や、
▼家族とのLINEのやり取りなどを公表し、
パワハラにあたる行為はあわせて15件に上るとした上で、歌劇団側に対し、こうした行為などを認めて謝罪と補償を行うようあらためて求めたことを明らかにしました。
【遺族側と歌劇団側合意に向け協議進める】
こうした中、遺族側の弁護士と歌劇団側の代理人はこれまで面談を重ね、合意による解決に向けた協議を進めてきました。
遺族側の弁護士によりますと、歌劇団側はことし1月24日付けの書面で、遺族側が主張する15件のうちの多くがパワハラに該当し、劇団員に多大な心理的負荷を与えたことを認めたということです。
ただ、歌劇団側は具体的にどの行為をパワハラと認めるかについてはこれまで明らかにしていません。
【双方の主張にはへだたりも】
遺族側は、合意した場合の公表のしかたなどをめぐって歌劇団側とは主張にへだたりがあり、3月も面談を行うとしていました。
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遺族(妹)の訴え全文
遺族側の弁護士は2月、死亡した劇団員の妹が心境をつづった「訴え」を公表しました。以下はその全文です。
私は遺族として、大切な姉の為、今、宝塚歌劇団に在団している者として想いを述べます。いくら指導という言葉に置き換えようとしても、置き換えられない行為。それがパワハラです。劇団員は宝塚歌劇団が作成した【パワーハラスメントは一切行わない】という誓約書にサインしています。それにもかかわらず、宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない悪質で強烈に酷い行為です。厚生労働省のパワハラの定義を見れば、姉が受けた行為は、パワハラ以外の何ものでもありません。宝塚は治外法権の場所ではありません。宝塚だから許されることなど一つもないのです。劇団は今に至ってもなお、パワハラをおこなった者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません。劇団は、生徒を守ることを大義名分のようにして、パワハラを行った者を擁護していますが、それならば、目撃したパワハラを証言してくれた方々も、姉も同じ生徒ではないのですか。そもそも【生徒】という言葉で曖昧にしていますが、パワハラを行った者は、れっきとした社会人であり、宝塚歌劇団は一つの企業です。企業として、公平な立場で事実に向き合うべきです。スケジュール改革や、各種改善策に取り組んでいるような発表をしていますが、姉の死を軽視し、問題を曖昧化しているとしか思えません。これ以上姉と私たち遺族を苦しめないでください。姉は体調を崩している訳でも、入院している訳でもありません。二度と帰ってきません。姉の命の重さを何だと思っているのでしょうか。劇団は、「誠意を持って」「真摯に」という言葉を繰り返して、世間にアピールしていますが、実際には、現在も遺族に誠意を持って対応しているとは思えません。これ以上無駄に時間を引きのばさないでください。大切な姉の命に向き合ってください。
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現役生「悩みや意見 言える環境を」
今回の問題について、宝塚歌劇団に所属する現役の劇団員がNHKの取材に応じ、「歌劇団には劇団員1人ひとりが悩みや意見をしっかりと言える環境を作ってほしい」と訴えました。
宝塚歌劇団が去年11月に公表した調査報告書では、今回の問題を受けて対処すべき課題として、劇団員が公式な稽古の前後に行っている自主的な稽古などを挙げていて、過密なスケジュールが全体的な余裕のなさを生んでいたと指摘しています。
今回、取材に応じた現役の劇団員の女性によりますと、自主的な稽古は公演が近づくと毎日のように行われ、日によっては午前0時までの10時間以上に及ぶこともあったということです。
女性は「歌劇団には体調が悪くても絶対に稽古に出なければならないという暗黙のルールがあり、自主的な稽古についても同じような思考に陥っていました。体調が悪いとか、きょうは行きたくないといった理由で休むことはできず、事実上の『強制稽古』ではないかと思っています」と話しています。
自主的な稽古では、時間や余裕がない中、上級生から下級生に対して厳しい指導が行われることもあったといいます。
これについて女性は、みずからも下級生が傷つくような言い方で指導したことがあると明かした上で、「私も先輩たちに同じことをされてきたので、後輩もそれを経験するべきだ、乗り越えるべきものだと錯覚していました。本当はおかしいはずなのに見て見ぬふりをして、それが『伝統』という形でずっと続いてきたのだと思います」と話しました。
今回の問題を受けて、歌劇団は劇団員の負担を減らすため、過密な公演スケジュールを見直すとともに組織風土の改善に取り組むとしていて、ことし1月からは1週間あたりの公演回数を減らすなどの具体策を実施しています。
こうした取り組みについて、女性は「体力的には少しは楽になるかもしれませんが、日々の稽古や上下関係などに悩む劇団員のSOSをしっかりと受け止めた上で改善につなげる仕組みができないかぎり、同じような悲劇は起きかねないと思います」としています。
その上で、「劇団員として日々活動する中で、ロボットのように扱われている感覚に陥ることもありますが、私たちはひとりの人間です。歌劇団にはまず、人の心を大切にしてほしい。そして劇団員1人ひとりが悩みや意見をしっかりと言える環境を作ってほしいです」と話していました。