選択的夫婦別姓、経済界も「長年の要請」と導入求める 経営者ら、同姓義務では「人・投資 集まりにくい」(2024年3月8日『東京新聞』)

 
 選択的夫婦別姓の法制化を求める声は、経済界にも広がっている。夫婦同姓を義務付けているのは世界でも日本だけで、投資や優秀な人材を遠ざけるリスクになるとみられているからだ。8日、「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」メンバーら約20人が関連省庁を訪れ、要望書などを提出した。
選択的夫婦別姓の早期実現を求め、門山法務副大臣(左)に要望書を提出する経済同友会副代表幹事の田代桂子氏=8日、東京・霞が関の法務省で

選択的夫婦別姓の早期実現を求め、門山法務副大臣(左)に要望書を提出する経済同友会副代表幹事の田代桂子氏=8日、東京・霞が関法務省

 法務省では、有志の会の呼びかけ人の一人で、経済同友会の田代桂子副代表幹事が要望書を提出。門山宏哲法務副大臣に「長年の要請。社内でも(別姓を選べず)困っている人が多く、コストもかかっている。ぜひ実現いただければ」と求めた。門山氏は「しっかり読み、大臣と問題について共有する」と応じた。有志の会は、経営者や役員ら計1000人超の署名も渡した。

◆外務省、内閣府でも要望書渡す

 経団連新経済連盟(新経連)、全国女性税理士連盟、女性経営者らでつくる「日本跡取り娘共育協会」の担当者も同行し、深沢陽一外務政務官矢田稚子(わかこ)首相補佐官古賀友一郎内閣府政務官に要望書などを渡した。新経連の井上高志理事は「なぜ制度ができないのか理由を問いたい」と語った。
 
門山法務副大臣(左端)に要望書を提出するサイボウズの青野慶久社長(左から2人目)ら。右端は経済同友会副代表幹事の田代桂子氏=8日、東京・霞が関の法務省で

門山法務副大臣(左端)に要望書を提出するサイボウズの青野慶久社長(左から2人目)ら。右端は経済同友会副代表幹事の田代桂子氏=8日、東京・霞が関法務省

 有志の会事務局の井田奈穂さんは経済界が要望する背景を「国際標準やジェンダー平等への遅れで投資も人も集まりにくくなり、経済成長の阻害要因になるのではという危惧や、ダブルネームの運用で企業に発生する無駄や海外で法的根拠のない名前を使用することによるリスク」と説明。要望が「硬直化して動かない政治に対する良質な圧力となれば」と話した。 (砂本紅年)

選択的夫婦別姓制度の早期実現に向けた要望

社会のDEI推進委員会
委員長 田代 桂子
大和証券グループ本社 取締役兼執行役副社長)
委員長 星野 朝子
(日産自動車 執行役副社長)
委員長 安渕 聖司
(アクサ生命保険 取締役社長兼CEO)

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 本会は、夫婦が自らの意志で姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の早期実現について賛同を表明します。

 1898年(明治31年)の旧民法で定められた夫婦同姓制度は戦後も引き継がれ、今日では、民法第750条により、夫婦は婚姻時に一方の姓を選択する夫婦同姓が規定されています。しかし、現状は妻(女性)が夫(男性)の姓に変更するケースが圧倒的多数を占めています。また、明治ならびに現民法にて制度化された1947年(昭和22年)当時と異なり、家族形態や個人の価値観は格段に多様化しています。
 夫婦同姓による経済社会への影響としては、女性の職業活動上の不利益、行政や金融機関の変更手続きに伴う負担が挙げられます。こうした中で、旧姓の通称使用の拡大が進められてきましたが、旧姓併記に対応した仕組み・システムへの変更にもコストを要しています。また、旧姓の通称使用は国際的には安全保障上のリスク要因になり得ることから、グローバル化に対応した政策とは言えません。
 個人の尊重と両性の実質的平等、多様な家族形態を認める社会を実現するためには、選択的夫婦別姓制度を早期に導入することが必要です。これは社会におけるDEI(Diversity, Equity & Inclusion)の浸透を促進する一歩であり、政府に対しては以下の三点を求めます。

 (1)夫婦同姓を規定する民法750条を改正し、婚姻時、夫婦が同姓、または各自の婚姻前の氏を称することができる選択的夫婦別姓制度を導入する
 (2)同制度に対し、国民の理解を深めるための啓発活動を強化する
 (3)同制度の導入に向けたロードマップを策定し、公表する

 本会は、あらゆる人材が活躍できる「多様性ある、公正で、包摂的な社会」の実現を目指し、今後もさまざまなステークホルダーと協働しながら、社会のDEIを推進していきます。

以上