再婚後出産、現夫の子に 改正民法が4月1日施行(2024年3月26日『日本経済新聞』)

 子が生まれた時期によって法律上の父親を推定する「嫡出推定」制度を変える改正民法が4月1日に施行される。離婚から300日以内の出産でも、女性が再婚していれば現夫の子と推定する。離婚した夫の子と推定されることを避け、子が無戸籍となる問題の解消を目指す。

  改正民法は2022年12月に国会で成立した。現行法は「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とする嫡出推定の規定がある。1898年施行の民法で定められた。

 この規定が無戸籍者問題の一因という指摘が長年あった。前夫以外の男性とのあいだで子が生まれたときに、前夫の子と推定して戸籍に記載されるのを避けるため、母が出生届を出さずに子が無戸籍になる事例がある。

 無戸籍だと住民票やパスポートは原則つくれない。親の遺産の相続や就職で不利になる場合がある。法務省によると24年2月時点で700人超が無戸籍だという。

 女性が離婚後100日間は再婚できない「再婚禁止期間」も撤廃する。法施行後の婚姻に適用する。いまは婚姻してから200日を経過した後の子は婚姻した夫の子と推定している。

 離婚後にすぐ再婚すると、離婚から300日以内の子は前夫の子と推定する規定と重複してどちらの夫の子か判断しにくいため禁止期間を設けていた。

 改正法は女性が再婚する場合は再婚後の夫の子と推定するのを優先することなどで重ならなくなった。

 日本は再婚禁止期間に関して、国連の女子差別撤廃委員会から繰り返し廃止を勧告されていた。

 母や子が事後的に嫡出推定を否認できる仕組みも新設する。改正法は子の出生後3年以内なら否認の訴えが可能になる。現行法は父のみが子の出生を知った時から1年以内に否認の訴えが可能で、夫に手続きをとってもらう必要があった。

 否認の訴えが3年間できることは子の利益を保護する観点から長いあいだ子が不安定な立場に置かれて望ましくないという意見もある。

 一方で法律上の父子関係を決めるという重大な決断を適切に判断する機会を確保するために重要だとの見解も有力だ。今回はこの考えに重きを置いた。

 改正法は施行する1日以降に生まれた子が対象になる。施行から1年間に限り、施行日より前に生まれた子に関しても子や母が嫡出推定を否認できる経過措置を設けた。法務省は全国の法務局に経過措置の周知について通知を出した。

 離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子という規定は残る。法務省が20年に実施した無戸籍者への調査によると、離婚後300日以内で生まれた子のうち改正の影響を受ける見込みの子は4割程度だった。

改正法は300日規定を原則として残しつつ母が再婚した際の例外を認めた
妊娠や出産の時期によって父親を決める「嫡出推定」を巡り、制度を変える改正民法が10日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。出産が離婚から300日たっていなくても、女性が再婚していれば現夫の子とみなす例外を設ける。現行法は離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する。父子に血縁関係がなかったとしても戸籍上は親子とみなされるため、母親が出生届を出さず子が無戸籍になる問題がある。改正法は300日規定を原則として残しつつ母が再婚した際の例外を認めた。嫡出推定の見直しとあわせて女性が離婚後100日間は再婚できない規定を撤廃した。

母や子が事後的に嫡出推定を否認できる仕組みも新設する。子の出生後3年以内なら否認の訴えを提起できると明記した。現行法は否認できないため母が出生届提出をためらう原因になっていた。

改正法は親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」の削除も盛り込んだ。「しつけ」を口実に虐待が正当化されかねない点に配慮した。体罰や「健全な発達に有害な言動」も許されないと記した.