「金利ある世界」で募る奨学金返済への不安、負担増に身構える大学生(2024年3月27日)

 日本の奨学金制度での利息負担は、米連邦政府による奨学金の利率5.5%と比べれば低い。一方、返済が不要な給付型が浸透してこなかったため、給付型が普及する米国や所得連動型が一般的な英国やオーストラリアに比べて、ローン負担の課題は残ると小林教授は指摘する。

節約志向

 一橋大学1年生の米沢康佑さんは、家計だけでは家賃や学費を賄えず、4年間で480万円を有利子で借りる予定だ。「元々返すことが不安だったが、利率の上昇でさらに不安になってしまった」と話す。卒業予定の27年に固定金利が現在の0.94%から1%上がると仮定すると、返済総額は55万円ほど上乗せされる。

 

奨学金返済への不安から、米沢さんは節約志向を徹底する。短時間で多く稼げる学習塾でアルバイトをし、月平均4万円から5万円ほど生活費を稼ぐ。食費を抑えるため、昼食は学食で285円のカレーを食べることが多いという。3年後の貸与終了後に決める金利方式を、金利上昇局面でどちらを選択すべきか検討を始めた。

 

SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人主任研究員は、日銀政策金利の0-0.1%への引き上げによって上積みされる利息金額自体は大きくはないが、「若年層にとっての所得に対するインパクトは大きい」とみる。収入に対する奨学金返済の割合が増えることで消費に悪影響が出る可能性もあるという。

 

その一方で、高水準の賃上げ率となっている今年の春闘の「恩恵は若者に及んでいる」とした上で、足元の賃上げを加味すると奨学金返済の負担増は限定的との見方も示した。連合が15日発表した第1回回答集計で、平均賃上げ率は5.28%と33年ぶりの高い伸びとなり、22日発表の第2回集計でも5.25%と5%台を確保した。

 

安部さんは将来結婚することを考えた場合、「結婚後にパートナーや子供に、経済的な負担が自分の過去の負の遺産として影響してしまうのはすごく嫌だ」という。「30代後半になると子供が小学校に行くと思う、 その頃までにはなるべく返済するお金はなくしておきたい」と話す。

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