内閣支持率アップにはこれしかないということか。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹・金与正党副部長が25日、談話を発表。岸田首相が最近、「できるだけ早い時期」に正恩と会談したいとの意向を伝えてきたと明かした。その上で、日朝関係を進めるために重要なのは「日本の政治的決断だ」と主張。日本側に拉致問題で譲歩するよう迫った。岸田首相が会談の意向を伝えてきたのは最近で、これまでとは別のルートだとしている。朝鮮中央通信が伝えた。
与正は先月15日にも談話で、日本が「すでに解決済みの拉致問題のような障害物を持ち出さなければ、首脳会談は可能だ」と示唆。談話の公表は今年に入って2回目だ。
これについて岸田首相は25日、「談話は承知している。北朝鮮との諸懸案を解決するには金正恩氏とのトップ会談が重要だ。私直轄でさまざまな働きかけを行う」と話したが、自らの意向を“暴露”されてしまった格好だ。
実際に岸田官邸が訪朝を画策しているのは、永田町では周知の事実。早期会談を狙う理由は明白だ。
「裏金事件で低迷する支持率を回復させるため、総理はどうしても訪朝し、正恩氏との会談を実現させたいようです。小泉内閣の2002年9月、電撃訪朝を実現したことで下落傾向だった支持率が急上昇しました。その再来を本気で狙っているようです。訪朝時期は、通常国会終盤の6月ごろとみられています」(永田町関係者)
「外交の岸田」をアピール
支持率アップの先に見据えるのは、国会会期末の衆院解散総選挙である。岸田首相が描いているのはこんなシナリオだそうだ。
「春闘で33年ぶりとなる5%超の賃上げが実現。賃上げ分が実際に給料に反映されるのに2~3カ月程度かかりますから、国民が賃上げを実感できるのが、ちょうど6月ごろとされています。加えて、所得税・住民税の定額減税が始まるのも6月。
あとは、日銀がマイナス金利の解除を決めましたから『デフレ脱却宣言』による経済の正常化アピールでしょう。総理は最近、『オレは安倍さんもできなかった賃上げとデフレ脱却をやるんだ』と高揚感に浸っているそうです。そこへさらに、訪朝を実現させることで『外交の岸田』を前面に打ち出す。これだけプラス材料があれば、裏金事件によるマイナスを吹き飛ばせると考えているようです」(官邸事情通)
しかし、肝心の拉致問題を巡っては平行線だ。北朝鮮が「解決済み」とする一方、岸田首相は「自分自身の手で解決する」と宣言している。今回の談話でも、「拉致問題にこだわるならば、首相の構想は人気取りにすぎないという評価を免れないだろう」と、思惑を見透かされてしまっている。狙い通りに事は運ぶのか。国際ジャーナリストの春名幹男氏は言う。
「経済的に困窮する北朝鮮としては、何とか日本との関係を構築したい。そのため、与正氏が2回も談話を公表し、正恩氏は能登半島地震で見舞い電報を送ったのです。条件が折り合えば、会談が実現する可能性はゼロではない。しかし、拉致問題を巡る交渉は一筋縄ではありません。安倍政権時に北朝鮮が一部被害者を返すと打診してきたのですが、一括帰国にこだわる安倍首相が無視し、頓挫した経緯があります。こうした北朝鮮側の条件を、岸田首相はのめるのか。最終的に折り合えず、会談が流れれば、岸田首相の解散シナリオも崩れるでしょう」
ここまで腹の内を“暴露”されて訪朝が立ち消えになれば、赤っ恥もいいところ。支持率アップも解散も夢のまた夢だ。