【生産性向上】課題解決に連携を(2024年3月25日『福島民報』-「論説」)

 とうほう地域総合研究所(総研)が県内企業を対象に実施した調査で、約9割が生産性向上の必要性を認識しているが、約3割は取り組みを検討する段階にとどまっているとの実態が浮かび上がった。小規模事業所では特に、資金面などから二の足を踏む例も想定される。行政や金融機関が中心となり、共に収益向上を目指す連携組織を設けてほしい。

 人手不足や将来の人口減少を見据え、生産性向上に向けた対策は不可欠とされる。とうほう総研は県内企業の実態を把握するため、昨年10月から11月にかけて2千社を対象に調査し、742社から回答を得た。

 生産性向上への取り組みは「実施済み」8・2%、「取組中」46・0%で全体の54・2%が何らかの対応を講じていた。一方、「今後、予定している」は34・6%だった。「予定はない」は8・1%で、売上高別では「5千万円未満」の企業が全体の17・2%、「5千万円以上1億円未満」は11・5%となった。予定のある企業の円滑な実施を後押しすると同時に、予定がない事業所に必要性を周知する努力も欠かせない。

 取り組む上での課題を複数回答で尋ねたところ、「優秀な人材の確保が困難」が52・7%で最多だった。デジタルインフォメーション(DX)やIT関連に詳しい社員が少なく、関連設備の導入をためらう事例も少なくないと、とうほう総研は見ている。将来にわたって労働生産人口の減少が進む中、専門的な知識を持つ人材をいかに確保し、育成するかに知恵を絞る必要がある。

 今回の調査は、人手不足に悩む小規模事業者への支援が急がれる現状を明らかにした。まず県、市町村、地方銀行や信用金庫が地域ごとに生産性向上を目指す組織を立ち上げてはどうか。金融機関の取引先から参加希望を募り、実施する上での課題を明確にする。その上で、専門人材の育成に向けた研修事業などを共同で進めたり、企業間でITに精通した社員を派遣し合ったりする仕組みを構築するのも一案だ。

 構成員が財・サービスを相互に活用し、共に販路開拓・拡大を目指す動きが生まれれば、組織の存在意義は一層高まるだろう。(菅野龍太)