「ふてほど」など484作品を撮影した「映像のまち」足利市 10年で経済効果9億円超、苦労したのは…(2024年3月24日『東京新聞』)

 
 栃木県足利市が「映像のまち」を掲げてフィルム・コミッション事業に本格参入して3月末で10年の節目を迎える。映画、ドラマ、CM、バラエティーなど撮影実績は484作品。TBS「不適切にもほどがある!」、フジテレビ「君が心をくれたから」「春になったら」など、話題の民放ドラマのロケ地として強い輝きを放っている。(梅村武史)
映像のまち事業10年の歩みを振り返る高田温子さん=いずれも足利市で

映像のまち事業10年の歩みを振り返る高田温子さん=いずれも足利市

 「10年間、積み上げた映像業界との信頼関係が強み」と話すのは、公益財団法人、市みどりと文化・スポーツ(MBS)財団映像支援室の高田温子さん。市が取り組みを始めた2014年度から一貫して撮影現場担当を担ってきた。
 市が、アジア最大規模の撮影スタジオ誘致を目指し「映像のまち構想」を発表したのが13年秋。14年度に「映像のまち推進課」を設置した。撮影誘致のスタートを飾った映画「バンクーバーの朝日」では、2万平方メートル超の空き地に日本人街や野球場などを整備し、撮影に全面協力した。
「不適切にもほどがある!」(2024年、旧足利西高)=MBS財団映像支援室提供

「不適切にもほどがある!」(2024年、旧足利西高)=MBS財団映像支援室提供

 ただ高田さんによると、当初は映像業界に行政が関わる難しさを感じたという。「制作側の要求は安価で効率的な撮影。市はロケ地の提案や確保から撮影許可手続き、現場の見守り、掃除、撤収作業まで徹底して協力したが、『まちの魅力発信』という私たちの思いがなかなか理解されなかった」という。
 時間をかけて相互理解を育み、良好な関係を築いてきた。活動主体は外郭団体に移ったが、大作ドラマの依頼はひっきりなし。背景には、制作側の拠点が集中している東京からの近さや良好な撮影環境、市民の理解もある。
 協力施設は、当初の数十施設から約230カ所に増えた。廃校を利用した旧足利西高スタジオ(大前町)、東京・渋谷の交差点を再現した「足利スクランブルシティスタジオ」(五十部町)、足利織姫神社(西宮町)、市役所(本城)、民間事業所、商業施設、飲食店、個人宅などで、多様なニーズに対応できる。
「今際の国のアリス」の撮影風景(21年、足利スクランブルシティスタジオ)=MBS財団映像支援室提供

今際の国のアリス」の撮影風景(21年、足利スクランブルシティスタジオ)=MBS財団映像支援室提供

 近年はロケ地の開放イベントへの協力、著作物の提供などが増え、若いファンの「聖地巡礼」などまちのにぎわい創出に貢献している。撮影関係者による施設使用料、宿泊、ロケ弁など直接的経済効果は10年間で約9億1000万円という。
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 映像支援室では、制作スタッフの手伝いやエキストラ出演などを行う学生サポーターを募集している。足利市内在住在学の高校・大学生が対象。問い合わせは同室=電080(7102)8126=へ。