(2024年3月24日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 勇壮な和太鼓の音で迎えました。伝統をうけつぐ若者たちが打ち鳴らす輪島高洲(こうしゅう)太鼓。その一打一打に、復興への願いが込められていました

▼きのう金沢市で“復活”した輪島朝市。雨天にもかかわらず会場の周りには朝から来場者の列ができ、シンボルのオレンジ色で統一した各店のテントにも人だかり。震災で倒壊した輪島塗の漆器店は「地震に負けたくない。もう一度お店を出したかった」と参加。破損をまぬがれた箸やお椀(わん)を並べていました

▼塩づくりを続けてきた輪島市朝市組合理事の中道肇さんは「みんな途方に暮れていたが、これが今年の初売りになった」と喜びます。開催に協力した石川県漁協や支援してくれる一人ひとりに感謝の気持ちでいっぱいだと語りました

▼地元は3カ月近くたっても復旧の見通しさえたたない厳しい現実があります。朝市通りは一面の焼け野原に、がれきの山。あたりには黒焦げになった食器や仏具などがいまも散乱しています

▼この地で代々輪島塗の漆器工房を営んできた男性は、変わり果てた朝市の姿にいちどは廃業を覚悟したといいます。しかし職人らと連絡をとりあいながら、手探りで存続の道へと歩みだしています

能登の工芸品や海産物をはじめ30店舗ほどが軒をつらねた出張朝市。「久しぶりのにぎわいに涙がでた」「大勢のお客さんに元気をもらった」。苦難のなかで、ふたたび店を構えた組合員らは復活につなげるための第一歩にしたいとの思いを口々に。いつかまた、輪島に帰って。