東北大で「君たちはどう老いるか」テーマにサイエンス講座…専門家3人が認知症などテーマに講演(2024年3月23日『読売新聞』)

 東北大学と読売新聞による共同企画「市民のためのサイエンス講座2024」が23日、仙台市青葉区の東北大川内キャンパスで開かれた。「君たちはどう老いるか~人生100年時代を生きるヒント~」をテーマに東北大の専門家3人が講演。難聴や認知症、終活など研究に基づく「老い」の解説に、約200人の来場者が熱心に聞き入っていた。

東北大で「君たちはどう老いるか」テーマにサイエンス講座…専門家3人が認知症などテーマに講演

「市民のためのサイエンス講座2024」で質疑応答に応じる登壇者(23日、仙台市青葉区の東北大川内キャンパスで)=富永健太郎撮影

 香取幸夫教授は、難聴と 誤嚥ごえん について、発症の仕組みや予防法を説明した。「加齢による難聴は徐々に進むため自覚しにくい」とし、「聞き間違いが多い」など七つの兆候を紹介。同じ言葉を反復して発するなど言葉の聞こえを保つ練習や難聴者と話す際のポイントを解説した。80歳代で特に高まる誤嚥性肺炎のリスクにも触れ、「毎食前、額に手を当ててへそを5秒見る」など予防になる筋力トレーニングを紹介した。

 中瀬泰然准教授は、健康寿命を延ばすうえでポイントになる認知症対策について語った。昨年12月に実用化された新薬レカネマブは「進行を遅らせる効果はあるが、認知症を改善する薬ではない」と指摘し、「予防がまだまだ重要課題だ」と強調した。腸や心臓の病気を治すことが、認知症のリスクを低下させると説明。喫煙など動脈硬化のリスクを高める行動を壮年期に減らすことも予防になるとして「適切な生活スタイルの管理が大切だ」と呼びかけた。

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多くの市民が来場し、講演に聞き入った(23日、仙台市青葉区の東北大川内キャンパスで)=富永健太郎撮影

 谷山洋三教授は、死の捉え方について解説した。生き死にを勝ち負けで例えるべきでなく「死を当たり前と思えることが大切」と指摘。人生の最後をどう生きたいのかを家族らと話し合う「人生会議」を元気なうちに行うことを勧めた。また、終末期の在宅医療を身近な人ら地域ぐるみで行う考え方を紹介。がんの患者会を紹介するなど、終末期を迎えた人や家族らと様々なコミュニティーをつなげることが「良い意味のおせっかい」になると語った。

 講演後には質疑応答も行われた。「認知症の人が幸せに感じることは何か」との質問には、中瀬准教授が「周りの人との関わりだ。複雑な話ではなく、その場の会話が盛り上がれば楽しく過ごせる」と回答。老いや死への不安との向き合い方については、谷山教授が「老いは長生きしないと経験できない。ラッキーで良い人生だと前向きに考えてほしい」とアドバイスした。

 講演を聞いた仙台市青葉区の女性(76)は「歩くことが認知症予防に効果があるなど様々なことを学んだので実践したい」と話した。