「ノーマリー教室」根付く函館 手話や車いす、小中で授業30年超 高齢化反映、介護学ぶメニューも(2024年3月23日『北海道新聞』)

 障害者や高齢者など誰もが共に暮らす「ノーマライゼーション」の普及を目指す体験型の授業「ノーマリー教室」が、函館の小中学校で30年以上続き、福祉教育として根付いている。当初は函館市社会福祉協議会が始めた事業だが、独自に講師を招いて行う学校もある。近年は介護ロボットの体験など、高齢化や介護現場の人手不足を反映した内容も取り入れられている。
 19日、赤川中(函館市赤川町)で行われたノーマリー教室。函館大妻高福祉科の教員や生徒が出向き、1年生約80人が三つのブースに分かれ、車いすでの移動などを体験した。
 視覚障害がテーマのブースでは、介助者役の生徒がアイマスクを着けた生徒とペアを組み、段差や狭い通路のあるコースを誘導。高齢者の疑似体験では、視野を狭くするゴーグルや指先の感覚を鈍らせる手袋を着け、小銭の出し入れがしにくくなることなどを体験した。木村励さん(13)は「体が思うように動かず、周囲からの声掛けのありがたさが分かった」と話した。
 函館大妻高は10年以上前から、道南の小中学校などからの依頼に応じてノーマリー教室を開いてきた。新型コロナウイルス禍以前は年間10校ほどに出向いていたという。福祉科主任の谷水菜見教諭(39)は「介助などの知識や経験を持つことで、支援が必要な人に出会ったときに行動しやすくなる」と狙いを語る。
 ノーマリー教室は、市社協が1987年度に湯川小と湯川中で始めた。ノーマライゼーションを推進する道のモデル地区に、学校や福祉施設が多い湯の川地区が指定されたことがきっかけだ。当時はノーマライゼーションという言葉や考え方が浸透しておらず、「ノーマリー教室」と呼ばれるようになった。福祉を学ぶ体験型の授業は函館以外でも行われているが、現在も函館市内では「ノーマリー教室」の呼称が一般的に使われている。
 市社協は、年間で小中学校10~15校程度で教室を実施。手話学習や盲導犬に関する講義など、各学校が希望するメニューを選び、同社協が専門の講師を派遣する。学校以外にも、町会や企業が研修に取り入れる例もある。
 2022年度からは、高齢者の介護について学ぶメニューを追加。介助者の腰への負担を軽くするパワードスーツの着用体験や、介護従事者の講演などを通して、介護の仕事への関心を高めたい考えだ。
 今後は、ノーマライゼーションの理念をいかに深く理解してもらうかが課題。ノーマリー教室は一部の学年の生徒を対象に開く学校が多く、1~2時間の授業時間で学べる内容は限られるという。市社協の市居秀敏事業課長(66)は「学んだ内容を家族と共有したり、各学校が繰り返し実施したりすることで、理解を定着させてもらえれば」と期待する。
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 函館市社会福祉協議会は、新年度のノーマリー教室の実施団体を募集している。募集対象は小中高校が10校程度、町会や企業などが2団体程度。無料。希望する団体は、同社協のホームページで入手できる希望調書に必要事項を記入のうえ、同社協にファクスまたはメールする。4月10日締め切り。問い合わせは同社協、電話0138・23・2226へ。