デジタル技術をどう学びに生かすかが問われる。
2025年度以降、中学校で使われる教科書の検定結果が公表された。各教科でデジタルの活用が進んだのが特徴だ。
数学の教科書では二次元コード(QRコード)の掲載が前回に比べて大幅に増えた。QRコードから専用の教材にアクセスし、端末の画面上で図形を動かすことなどが可能になる。
英語は記載内容が電子化されたデジタル教科書も本格導入される。文中のリンクから動画や音声に飛ぶことができる。
英語の「聞く」「話す」の力を伸ばしたり、数学の法則を容易に理解したりできる。文字の拡大や読み上げ機能を活用することで、障害のある生徒たちも学びやすくなるだろう。
17年に改定された学習指導要領は「主体的・対話的で深い学び」の重視を掲げている。
デジタル化は生徒たちに積極的な学習を促す可能性がある。ただ、教科書の補助教材という位置づけのデジタル教材は教科書会社が用意したものだ。与えられたリンクを利用するだけでは必ずしも主体的とは言えない。
深く学ぶには、能動的に情報を集め、考える取り組みも必要だ。図書館などに蓄積された書籍や文献の活用は有力な手段となる。
ネット上には偽情報も多い。信頼できる情報源を見極めるためのリテラシー教育も重要だ。
教員にはデジタルの特性を踏まえたスキルの向上が求められる。
デジタル教材は原則、検定の対象外である。教科書会社が独自に工夫できる利点もあるが、質をどう担保するかが課題だ。機能や操作方法などについても一定の標準化を考えるべきではないか。
家庭のネット環境整備も急務だ。経済的に困窮する保護者にとって通信費は大きな負担となる。公的な支援の充実が欠かせない。
紙の教科書にもメリットはある。学習内容を一覧できることだ。自分が学んでいることの位置づけを理解しやすい。新旧の利点を生かした方策を考えたい。
最も重要なのは、子どもたちが質の高い教育を平等に受けられることだ。行政と学校には、その環境を整える責任がある。