クルド人が最も大切にする春祭り「ネウロズ」開催 ヘイト騒動を超えてさいたまの公園に踊りの輪(2024年3月20日『東京新聞』)

 
 トルコなどの少数民族クルド人の春祭り「ネウロズ」が20日さいたま市桜区の秋ケ瀬公園で開かれた。民族差別の電話が公園管理事務所などに寄せられ、開催が一時危ぶまれた。多くの日本人も踊りの輪に入り、クルド文化を楽しんだ。
新年の祭り「ネウロズ」で、伝統音楽に合わせて踊る日本人参加者とクルドの人たち

新年の祭り「ネウロズ」で、伝統音楽に合わせて踊る日本人参加者とクルドの人たち

 ネウロズはクルド語で「新しい日」の意味で、クルド人が最も大切にする春祭り。20日は晴天の下、華やかな民族衣装を着た人たちが手をつなぎ、伝統的な音楽に合わせて踊った。主催の日本クルド文化協会のチョーラク・ワッカスさんは「たくさんの日本人に助けてもらい、開催できた。日本の友人たちに感謝したい」と語った。
 今年に入りクルド人に会場を貸さないよう求める電話やファクスが、公園を管理する埼玉県公園緑地協会にあった。協会は「安全を担保できない」として不許可の方針を示したが、クルド文化協会と日本人の支援者の抗議を受け、対応の誤りを謝罪し開催を認めた。その後も文化協会などには「クルド人は帰れ」などヘイト電話やメールが相次いだ。
華やかな伝統衣装に身を包むクルド人女性たち=20日、さいたま市桜区で

華やかな伝統衣装に身を包むクルド人女性たち=20日さいたま市桜区で

 祭りには例年以上に多くの日本人が加わった。4月から大学生の森脇愛さん(19)は「異文化を排除するのではなく、良い所を探して一緒に楽しんだ方がいいと思う」。さいたま市の40代の女性会社員も「地元の人は共生を目指している。地域を知らない人たちが対立をあおっている面が大きい」と話した。
 クルド人側の要請で、埼玉県警が会場を警備。数人が拡声器でヘイトスピーチをしたものの、混乱はなかった。(池尾伸一)

 クルド人 独自の言語と文化を持つ民族でトルコ、イラクなどにまたがって居住。トルコで激しい弾圧を受け、国連推計では2011年からの10年間に世界各国で約5万人が難民認定された。日本では埼玉県川口市などに約2000人が住むものの、裁判の結果、2022年に1人が難民認定されたにとどまる。2023年以降一部のヘイト的攻撃の対象となり、日本クルド文化協会は今年3月、名誉を傷つけられたとしてフリージャーナリストを相手取り、損害賠償を求めて提訴した。