川口クルド問題 朝日、共同などの報道状況を検証 事件報道わずか、イベントには好意的 「移民」と日本人(2024年3月16日『産経新聞』)

産経新聞
 

埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している問題で、地元住民などから大手メディアの消極姿勢に疑問の声が上がっている。朝日新聞共同通信など5つの媒体について報道状況を検証したところ、事件や不祥事については報道量が少なく、扱いも小さい一方、取り上げられる際は、同情的、好意的な報じ方が一般的となっている実態が浮かんだ。

【写真】クルド人ら約100人が病院周辺に殺到し騒ぎがあった現場

■20件中わずか

2件 昨年6月から今月にかけて、産経新聞や産経ニュースが取り上げたクルド人と地元との軋轢をめぐるニュースや、クルド人の犯罪についての事案など20件について、朝日、毎日、読売の全国紙3紙と共同通信、地元紙の埼玉新聞の5媒体を対象に、商用データベースなどで報道状況を調べた。

その結果、産経を除き3媒体以上が報じたニュースは20件中、わずか2件しかなかった。2媒体が報じたニュースは7件、1媒体しか報じなかったニュースが5件、まったく掲載していないニュースが6件だった。

1媒体だけの場合は地元紙が多かった。 川口市議会は昨年6月末、国や県などに「一部外国人による犯罪の取り締まり強化」を求める意見書を賛成多数で可決した。この意見書は、具体的な民族名こそあげていないものの、クルド人を念頭に置いたもので、地方議会としては異例の出来事だった。

■地元紙さえ報じず

産経新聞もこのニュースを報じたのは約1カ月後だったが、クルド人と住民との軋轢の実態や議決の背景、与野党議員の声などを大きく取り上げた。

一方で地元紙も含め、各紙は産経が報道するまでまったく報じず、地元紙が8月中旬の企画記事の中で、全国紙の1紙が9月にクルド人問題をめぐる政治家の動きを報じる中で触れたのみだった。

今月7日、女子中学生に性的暴行をしたとして不同意性交容疑でクルド人の男が逮捕された性犯罪事件も、産経以外は2紙しか報じなかった。報道した2紙も「トルコ国籍」との表記で、逮捕されたクルド人が事実上の「移民2世」であることなど詳しい背景は報じられなかった。

一方で、川口市内で開かれたクルド人の写真展などのイベントはほとんどの媒体が好意的に紹介していた。クルド人の祭り「ネウロズ」の開催をめぐり、埼玉県側が公園の使用を一時認めなかった問題も、ほぼ全媒体が報じていた。

■事件報道は「トルコ国籍」

また、「クルド人」という民族名は、難民認定申請を繰り返す彼らが法的に不安定な立場に置かれているとして、同情的に報じるケースが目立った。逆に、事件や不祥事などでは「トルコ国籍」とだけ報じて民族的な背景を報じなかったり、単に「外国人」とだけ表記したりするケースもあった。

昨年8月、川口市内の男子中学生が大型商業施設への威力業務妨害容疑で逮捕された際に報じた2紙も「トルコ国籍」「外国籍」との表記だった。

また、先月26日の衆院予算委で、川口市を地元とする議員が、外国人の治安問題について民族名の名指しを避けながら質問した際は、共同通信が記事を配信し全国紙1紙が掲載したが、その内容は「ヘイトスピーチだ」などとするジャーナリストの談話を掲載した批判的なものだった。

■「実態が報道されない」

今回、地元住民らから寄せられたメールでも、《日本人の女子中学生がクルド人にレイプされたのに、ほとんどのマスコミが重要視せず、川口の実態が報道されないことは異常としかいいようがない》《「ヘイトスピーチだ」などとするジャーナリストの談話を掲載した通信社や、そのジャーナリストは本当に川口の実態を知って批判しているのでしょうか》など、大手メディアへの不信感が渦巻いていた。

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