自民党大会で岸田首相「変わらなければ」 現時点で変わった形跡ほぼなし 所属議員に胸中を聞くと…(2024年3月17日『東京新聞』)

 
政治とカネの問題で揺れる自民党が17日に東京都内で開いた党大会。岸田文雄首相は「自民党は変わらなければならない」と訴えたが、政治資金パーティー裏金事件の関係議員の処分も、政治資金規正法改正の具体案も示さないまま。自民党が変わった形跡はほとんど見られない。大会後、出席議員が処分のあり方や党の今後について語ったが、危機感のほどは。
 
17日の自民党大会で演説する岸田文雄総裁

17日の自民党大会で演説する岸田文雄総裁

◆安倍派幹部に「大いなる責任」と西田昌司

安倍派に所属し、参院政治倫理審査会でも弁明した西田昌司参院議員は、安倍晋三元首相がパーティー収入の還流廃止を指示した当時の塩谷立下村博文両会長代理、西村康稔事務総長、世耕弘成参院幹事長の4人について「大いなる責任がある」と指摘。
「自ら出処進退を決めることが本人にも党にとっても良いことだ」と、党による処分の前に離党などを自分で判断をするよう求めた。「自民党が変わらなければこのまま終わり。党歌を歌いながら、みんな感じたのでは」と語った。

片山さつき氏「国民が知りたいのは真実」

会場から出てきた元安倍派の片山さつき参院議員は、大会を終え「ここをボトムとして何とかしたいという気持ちが見えていたと思う」と語った。
裏金事件に関しては「今回はインボイス(適格請求書)と電子帳簿が入り、コンプライアンスコストがかかる確定申告の時で、大きく(世論が)盛り上がった。政治関係者は非課税なりの信用されるような人なのか見せなければならない」との考えを示し、「処分も済ませ、どこまで許していただけるかだ」と真剣な表情で語った。
衆院参院の政倫審で弁明した安倍派幹部の発言に食い違いがあり、真相があやふやなままになっている点に関しては「国民が知りたいのは本当はどうだったのかということ。(幹部が)一堂に会して話し合っていただけるのがいちばん良い」と話した。

◆政権の支持率低迷でも「法改正や処分、補選見守る」と柴山昌彦

同じ安倍派に所属した柴山昌彦衆院議員は、処分について「幹事長室や党紀委員会で検討されるのかなと思っている」とひかえめに語った。支持率が低迷する岸田政権で次期衆院選を迎えられるかどうかは「政治資金規正法の改正や処分、補欠選挙をしっかり見守っていくことではないか」と静観する姿勢を示した。
 
17日の自民党大会

17日の自民党大会

二階派に所属した大岡敏孝衆院議員は「自ら自分の処し方を決めるのが当たり前。企業や団体のトップも自分の処分を決めている。同じことを幹部と言われる人たちにはやっていただきたい」と強調した。

◆安倍派高木毅氏は足早に立ち去った

一方、安倍派事務総長だった高木毅前国対委員長は、報道陣の取材に立ち止まることはせず、処分について「私はもう党の方針だと思うので、はい」と言葉少な。「党が処分を決めれば従うか」と問われると「それはそうですね、はい」とだけ話し、足早に去った。

◆次の総裁候補・石破茂氏は「総裁選規定」見直しに言及

次の総裁候補として名前が挙がることもある石破茂元幹事長は、処分について「お怒りの声があるのは知っているが、党紀委員会で透明性をもってやるべきだ。感情でやるのはまずい」と冷静な対応を求めた。
4月の衆院3補欠選挙のうち、東京15区と長崎3区で自民党が擁立を見送る方向となっている点に関し「不戦敗は引き分けというのは嘘で、負けは負け」と指摘。「補選(の結果)が全国に波及することは何度もあった。国政そのものに影響を与えるわけではないということは全く当たらない。一つでも勝つべく、党として総力を挙げるということに尽きる」と強調した。
党大会で、資金力と人事への影響をもつ「派閥」の設立を禁じるガバナンスコードの改訂を了承したことを受け、石破氏は今後の党総裁選について「派閥の合従連衡で決まったという印象を国民に与えれば、総選挙や参院選にそのツケが出るだろう」と語り、党員の意向を反映させる総裁選規定の見直しの必要性も主張した。