性加害の被害者だった31歳女優が初監督映画で“告発”「次の被害者を出したくなかった」(2024年3月17日)

映画『ブルーイマジン』で監督務めた松林うららが明かす性加害の実態

傷は癒えたのか…「血がダラダラ流れているような感じではある」
 その傷は癒えたのか。

「今も、治りかけのかさぶたが閉じては剥がれて、血がダラダラ流れているような感じではあるんですけど、変身する勇気を持たないと、人は本当の傷つきから回復しないのだと思っています。今回、私はある意味で生き延びるために死ぬ気で映画を作りましたが、これだけでは社会は変わらない。辛いテーマではあるけれども、光を感じていただけるのであれば、作り手としてはすごくありがたいです」

 松林は映画好きの両親の下で育ち、小学校高学年からスタンリー・キューブリックデヴィッド・リンチ作品に夢中に。中高大と女子校に進む中、高3の時にはワタナベエンターテイメントの養成学校、大学時代には映画学校「映画24区」に通いながら、映画製作に目覚めた。

「監督はすごくやりがいがあり、学びがあり、楽しかったのですが、今はそのエネルギーがあるかどうか。今回は、こういう重いテーマを選んだから、ラストは救いや希望のある、見やすい映画にしたいと思ったんですが、本当はぶっ飛んだ映画が好きなんです。エマ・ストーンが主演・プロデュースした『哀れなるものたち』のような女性から見た性の快楽も描いてみたいですし、SFも撮ってみたい」。昨今、女優のプロデューサー進出、女流監督も台頭が目覚ましい中、松林の今後にも注目だ。

 

平辻哲也

 

□松林麗(まつばやし・うらら)1993年3月13日生まれ。東京都出身。昭和女子大卒。長編映画『1+1=11』(2012年/矢崎仁司監督)で俳優デビューして以来、東京国際映画祭ロッテルダム国際映画祭など著名な映画祭に出品された『飢えたライオン』(17年/緒方貴臣監督)の主人公を務めるなど、数多くの作品でさまざまなキャラクターを演じている。20年には、映画界におけるセクシャルハラスメントに立ち向かう長編映画『蒲田前奏曲』を製作。同作品は大阪アジアン映画祭のクロージング作品に選ばれ、国際コンペティション部門の審査員も務めた。映画『愛のまなざしを』(21年/万田邦敏監督)にはアソシエイト・プロデューサー・出演として、映画『緑のざわめき』(2022年/夏都愛未監督)にはコプロデューサー・出演として参加。

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