【東山盆踊り80周年】持続可能性探る契機に(2024年3月16日『福島民報』-「論説」)

 会津若松市東山温泉の東山盆踊りは8月、5年ぶりに復活する。新型コロナ禍で中止が続いていた夏の風物詩で、今年は80周年の節目に当たる。これまでの歴史と伝統を継承しつつも、装いを新たにし、持続可能な開催の在り方を探る契機になるよう願う。

 東山盆踊りは、太平洋戦争時の1944(昭和19)年、東京から東山温泉に疎開してきた児童を励まそうと、温泉地内の湯川にやぐらを組んで開催したのが始まりとされる。主催する東山温泉観光協会によると、最盛期の昭和50年代には1週間余にわたって繰り広げられ、市民や観光客ら約10万人の人出でにぎわった。レジャーの多様化などで近年は減少傾向にあり、新型コロナ禍前は4夜の開催で約6千人が参加した。

 今年は8月1日から4日までの4日間を想定し、東山芸妓[げいぎ]が歌う「会津磐梯山」の名調子に合わせて踊りの輪を広げる。従来はお盆期間に開催していたが、旅館やホテルの繁忙期を避けることで、より多くの地元関係者の参加が期待される。これまで以上に若い世代に足を運んでもらうには、魅力づくりも欠かせない。現代風の曲を取り入れたり、それに合った振り付けを考案したり、新たな趣向が求められるだろう。

 

 東山温泉に宿泊した昨年1年間のインバウンド(訪日客)は1万1760人(速報値)で、新型コロナ禍前の2019年の6328人と比べて約5千人増えている。国・地域別では、台湾が約4800人と最も多く、タイ約2千人、欧米約1400人と続く。盆踊りでは、川床に福島民報社寄贈の高さ約14メートルの大やぐらが組まれる。色とりどりのちょうちんが揺れる東山温泉ならではの風情は、訪日客をいざなう観光素材に十分なり得る。地方への誘客を促す観光庁の地域観光新発見事業などを活用し、体験型観光に磨きをかけるべきだ。

 やぐらの組み立てや解体など開催には多額の費用がかかる。今回は宿泊施設や地元企業などからの協賛に加え、初の試みとしてクラウドファンディングで寄付を募る考えだが、多くの賛同を得るには、国内外に魅力を広く知ってもらう必要がある。デジタル技術を活用した情報発信に努め、安定した資金調達につなげてほしい。(紺野正人)