「もう少し前に進めてほしかった」。同性婚訴訟の東京地裁判決で「違憲状態」とする判断が示された14日午前、原告らは一様に複雑な表情を浮かべた。
同性婚認めぬ規定「違憲状態」 3例目、賠償請求は棄却―全国で判断割れる・東京地裁
午前10時半からの判決を前に、原告らは「結婚の平等にYES」と書かれた横断幕を掲げ地裁に入った。周辺には性的少数者の社会運動を象徴するレインボーフラッグを手にした支援者らが集まり、原告の鳩貝啓美さん(58)は「私たちの後ろにはたくさんの当事者がいる。裁判官の良心を信じたい」と報道陣に語った。
午前11時すぎ、地裁前で原告らが「違憲判断5件目」「婚姻の平等 今すぐ実現を」などと書かれた横断幕を掲げると、支援者からは拍手が送られた。
原告の山縣真矢さん(57)は「国会にプレッシャーをかけられるような、もう少し前に進む判断が欲しかった」と残念そうな表情。河智志乃さん(52)は「違憲状態」を歓迎し、「明確な判断をしておらず残念だが、風向きは変わっており、法制化の足掛かりとなる判決になれば」と力を込めた。
同性同士の結婚を認めないのは違憲としてカップルらが起こした訴訟の判決が14日、東京地裁と札幌高裁である。東京都内に住む原告は「命が懸かっているといっても過言ではない」と、結婚が一刻も早く実現するような判断を望んでいる。
同種訴訟はこれまで5地裁で判決が出され、うち2件が結婚による法的効果を一部でも認めないのは憲法が定める「法の下の平等」に反するなどとし、別の2件は「違憲の状態にある」、1件が合憲と判断。結婚の自由を保障した規定については5件とも合憲とした。
原告の河智志乃さん(52)と鳩貝啓美さん(58)は性的マイノリティー女性向けの勉強会を通じて出会った。レズビアンであることにプライドを持つ鳩貝さんと、将来を見据えて生きる河智さんは引かれ合い、一緒に生活を送るようになった。
人生を共に歩むと決めた時、河智さんがまず準備したのは遺言書。結婚できない中、自分の死後に持ち家を残せるか。「財産を法律的に守る方法が何もない」と感じ、遺言を残すことで鳩貝さんを守ろうとしたという。
また、配偶者控除の対象にならないため、結婚した夫婦よりも税金を多く払わなければならないなど、「配偶者ではないことの不利益は多岐にわたる」と明かす。
先行する訴訟で違憲や違憲状態との判断が相次いだことについて、鳩貝さんは「現状がいかに異常か実感する」。ただ「結婚できないことそのものを違憲と言ってくれていない」と話し、判決に期待を寄せる。
別の訴訟では判決を聞くことなく亡くなった原告もいる。河智さんは「私も来年いるかは分からない。命が懸かっているといっても過言ではない」と話し、法改正につながるような判断を求めた。