政治資金問題であす参院政倫審 世耕氏 西田氏 橋本氏出席へ(2024年3月13日『NHKニュース』)

 

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて参議院では、14日、政治倫理審査会が開かれ、安倍派の世耕前参議院幹事長、西田昌司氏、橋本元オリンピック・パラリンピック担当大臣が出席します。参議院政治倫理審査会の注目点です。

《注目点1》 参院選の年の全額キックバック

安倍派では、少なくとも参議院選挙があった2019年と2022年に開いた政治資金パーティーについて、改選となる参議院議員にパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックする運用が行われていたことが、関係者への取材でわかっています。

こうした運用について、野党側は、「選挙活動に使われたのではないか」などと指摘していて、審査会に出席する議員がどのような説明をするのかが焦点の1つです。

《注目点2》 キックバック継続の経緯は

焦点の2つめは、衆議院政治倫理審査会で明らかにならなかった派閥の議員側へのキックバックが始まった経緯、そして安倍・元総理大臣が、中止を指示したとされる議員側へのキックバックがなぜ、その後も継続したのかです。

審査会には安倍派の幹部だった世耕前参議院幹事長が出席することになっています。

世耕氏は議員側へのキックバックを中止するよう、当時の派閥会長の安倍氏が指示したとされるおととし4月の会合、銃撃事件で亡くなった安倍氏を除く派閥の幹部らが集まり、キックバックの継続についても話し合いが行われたとされるおととし8月の会合、どちらの場にも参加していたと、西村氏、塩谷氏が、衆議院政治倫理審査会で発言しています。

野党側が、衆議院の審査会での安倍派幹部らの説明に「食い違いがある」と指摘している派閥内の意思決定の経緯について世耕氏が、どのような発言をするのかが注目されます。

出席する3氏の「不記載の内容」

 

世耕弘成参院幹事長

安倍派「5人衆」と呼ばれた議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーだった世耕弘成参議院幹事長は、自民党が行ったアンケートで、2021年までの4年間に不記載などの金額が、あわせて1542万円あったとしていて、年ごとの内訳は2018年が102万円、2019年が604万円、2020年が360万円、2021年が476万円となっています。

自身が代表を務める政治団体「紀成会」の2020年と2021年の政治資金収支報告書に派閥からの収入、あわせて836万円を記載していなかったとして2月29日に収支報告書を訂正しています。

また、支出として新たに“贈答品代”や“宿泊代”などが記載されていましたが、支出の総額や、内容の一部が「不明」となっていました。

世耕氏は1月の記者会見で「政治資金の管理については秘書に任せきりだった」などと話していました。

西田昌司議員

また、安倍派の西田昌司議員は、自民党が行ったアンケートで2022年までの5年間に不記載などの金額が、あわせて411万円あったとしていて、年ごとの内訳は2018年が35万円、2019年が142万円、2020年が126万円、2021年が68万円、2022年が40万円となっています。

自身が代表を務める政治団体「一粒会」の2022年までの3年分の政治資金収支報告書に派閥からの収入あわせて234万円を記載していなかったとして1月31日に収支報告書を訂正しています。

西田氏の事務所は収入は翌年以降の「清和政策研究会」のパーティー券の購入費用に全額充てていたと説明していて、西田氏は「秘書が独自の判断で行ったことだが、監督不行き届きだったことを痛感し、道義的責任を強く感じている」などとしています。

橋本聖子 元五輪担当相

安倍派の常任幹事会のメンバーだった橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣は、自民党が行ったアンケートで2020年までの3年間に不記載などの金額が、あわせて2057万円あったとしていて、年ごとの内訳は2018年が202万円、2019年が1566万円、2020年が289万円となっています。

自身が代表を務める政治団体自民党北海道参議院比例区第八十三支部」の2020年の政治資金収支報告書に派閥側からの収入289万円を記載していなかったとして3月1日に収支報告書を訂正しています。

自身のホームページに「還付金は本来寄付金として取り扱うべきであり、皆様にご心配をおかけしましたことを心よりおわびいたします」と記載しています。

衆院政倫審での安倍派歴代事務総長4人の発言は

 

衆議院政治倫理審査会には、安倍派の歴代の事務総長を務めた西村前経済産業大臣、松野前官房長官、塩谷元文部科学大臣、高木前国会対策委員長の4人が出席しました。

1 違法性の認識は

審査会で4人は、違法性の認識について、いずれも派閥の会計処理には一切関わらず、収支報告書への記載についても報告を受けていない。不記載は知らなかったなどと否定しました。

2 キックバックの始まりは

キックバックが始まった経緯についても、明らかにはなりませんでした。

塩谷氏は「20数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」と述べました。

西村氏は「自前で政治資金を調達することが困難な若手や中堅議員の政治活動を支援する趣旨から始まったのではないかとされているが、いつから行われていたかは承知していない。派閥の歴代会長と事務職の事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことで会長以外の幹部が関与することはなかった」と述べました。

西村氏は、森元総理大臣以外の歴代の安倍派の会長がすでに死去している中、森氏に確認しないのかと問われたのに対し「森元総理が関与していたという話は聞いたことがないのでしていないが、疑念が生じるのであれば、わたしどもが確認しても口裏を合わせたんじゃないかと言われかねないので、第三者の方が確認するのがよいのではないか」と答えました。

3 キックバック再開の経緯は

衆議院政治倫理審査会で質問が集まったのが、銃撃事件で亡くなる前の安倍・元総理大臣が、中止を指示したとされる議員側へのキックバックがなぜ継続されたのかです。

西村氏の説明によると、おととし4月、安倍派の幹部5人と、会計責任者である事務局長が集まった会合で、当時派閥の会長だった安倍氏が「現金でのキックバックが不透明である」という考えなどから、議員側へのキックバックを中止するよう指示したということです。

しかし、議員側からキックバックの継続を求める声が出たことから、安倍氏が死去した翌月のおととし8月上旬、安倍氏以外の5人で再び集まった会合で、キックバックの継続について協議したということです。

このときの協議について、西村氏が「結論は出なかった」と説明した一方、塩谷氏は「還付をどうするか、困っている人がたくさんいるから『しょうがないかな』というくらいの話し合いで、継続になったと理解している」などと説明しました。

また、この会合よりも後のおととし8月に事務総長に就任した高木氏は、「おととしの11月、派閥の事務担当者から、前年までと同様、還付がされると連絡を受けた。それまでの間、どのような検討がなされたか、まったく認識していないし、一切関与していない」などと述べました。

こうした安倍派の幹部らの発言について、野党側は「食い違いがある」などと指摘しています。

専門家「国民の厳しい目線を肝に銘じて」

 
神奈川大学 大川千寿教授

政治過程論が専門の神奈川大学の大川千寿教授は、衆議院で開かれた政治倫理審査会について次のように指摘しました。

「緊張感のある公開の場で出席者の発言の矛盾などが浮き彫りになった点では評価はできるが、一連の政治資金の問題で、政治的な責任、道義的な責任の所在がどこにあるのかが見えない残念な質疑だったといわざるを得ず、真相を知りたい国民が求めたものと、説明さえすれば責任を果たせていると考える議員との間で、中身がまったくかみ合っていなかった」

衆議院の政倫審での質疑が、相当消化不良だったことで、国民の不満はますます高まっていて、参議院の政倫審には、鋭い目線が注がれていることを弁明する議員も、質問をする議員も、肝に銘じてほしい。『良識の府』らしく、衆議院で明らかにならなかった疑問点について、なるべく要点を絞って深く掘り下げることを期待したい」

政治資金収支報告書を相次いで訂正

政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、自民党の派閥と、派閥に所属していた国会議員らが、政治資金収支報告書を相次いで訂正しています。

安倍派「清和政策研究会」は、収支報告書の保存が法律で義務づけられているおととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が4億3588万円あったとして、政治資金収支報告書を訂正しました。

さらに、記載されていなかった当時の所属議員や元議員らの政治団体への派閥からの寄付、4億2726万円も書き加えられました。

二階派志帥会」は、おととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が1億3614万円あまりあり、当時の所属議員側への寄付が6533万円あったとして、政治資金収支報告書を訂正しています。

岸田派「宏池政策研究会」もおととしまでの3年分の政治資金収支報告書を訂正し、このうち2020年には記載していないパーティー収入が896万円あったなどとしています。

一方、派閥からの支出が確認された国会議員や元議員ら、98人の政治団体の収支報告書の訂正について、NHK総務省や各都道府県の選挙管理委員会のホームページで確認したところ、12日の時点で、少なくとも88人の団体が訂正を行っていました。