ビッグモーターは不正請求問題で社会からの信頼を失った
保険金の不正請求問題で経営難に陥っている中古車販売大手、ビッグモーターの出直し策がまとまった。創業家が関与しない新会社に事業を移し、伊藤忠商事が主導する形での再建を目指すという。いまだ顧客や地域社会の疑念は根深い。真摯に信頼回復に取り組むことから始めてもらいたい。
ビッグモーターの経営を巡る一連の問題は記憶に新しい。顧客の車を意図的に傷つけて保険金を不当に請求したり、全社的にパワハラが横行したりしていたという。違法残業や街路樹損壊の疑いも持たれている。
再建を期すなら、数々の問題の温床となった経営体制を抜本的に改める必要がある。従業員を恐怖心で支配してきたとされる創業家の影響力を排除することは、その第一歩と言えるだろう。
伊藤忠は企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、創業家とのしがらみのない新会社を4月に設立する。ユーザーを顧みない社風を一新することがまず必要だろう。
会社の形が変わっても中身が変わらないようでは、ビッグモーターだけでなく、伊藤忠やJWPの信頼にも関わってくる。現場任せにせず、責任ある取り組みを期待したい。
保険金の不正請求を巡っては損害保険会社との不適切な関係も問題視された。ビッグモーターはすでに金融庁から保険代理店登録を取り消されているが、新会社では外部の金融機関との関係を健全な形で再構築する必要がある。
一方で、訴訟対応や債務の返済に専念するのは旧会社の役割だ。こちらも真摯な対応を求められることは言うまでもない。
日本自動車工業会によると、自動車の販売・整備(新車含む)には、およそ100万人が従事しているという。その大半がまじめに働く人たちだ。ビッグモーター問題の余波で不信感が業界全体に広がるのを防ぐためにも、再建を担う伊藤忠などには信頼回復の徹底を求めたい。