自民党則改正へ 実効性ある改革につなげよ(2024年3月13日『読売新聞』-「社説」

 党の規定を見直し、信頼を回復しようとする自民党の意図はわかるが、党内措置を講じるだけで根本的な解決が図られるわけではない。

 政治資金の透明性を高めるための法改正を実現し、結果を出すことが重要だ。

 派閥の政治資金規正法違反事件を受け、自民党が党則などの改正案をまとめた。17日の党大会で決定する予定だ。

 改正案では、政治団体の会計責任者が規正法違反で逮捕・起訴された場合、所属国会議員に離党勧告や党員資格の停止などの処分を科せるようにする。会計責任者の有罪が確定したら、最も重い除名処分も可能とする。

 一連の事件では、派閥の会計責任者らが立件された一方、幹部議員は刑事責任を問われなかったため、「責任逃れ」という批判を浴びた。議員の処分を明確にするのは、強い危機感の表れだろう。

 改正案には派閥の存続と新設の禁止も明記した。政策集団としての活動は容認するものの、政治資金パーティーの開催は禁じる。

 派閥は「数の力」を頼りに、内閣・党の役職の配分に影響力を行使している、と批判されてきた。一方で、人材育成の場として役割を果たしてきたのも事実だ。

 派閥が担ってきた機能をどう代替し、健全な党運営を実現していくのか。自民党の具体的な方策が問われよう。

 今後の焦点は、規正法の改正論議に移る。与野党は議員に対する罰則を強化する方針だ。

 現行の規正法は、政治家の責任が問われるケースを、会計責任者の「選任および監督」で注意を怠った時に限っている。

 公明党などは「選任と監督のいずれか」に落ち度がある場合、政治家の責任を問う案を示しており、検討課題となるだろう。

 多くの政党が党幹部ら議員個人に渡している「政策活動費」の見直しも論点となる。

 自民党の場合、税金が原資の政党交付金は、政党支部を通じて議員側に支出し、政党支部は法律に従って使途を公表している。一方、献金や党費を原資とする政策活動費は、使途公開の義務がない。

 野党は、政策活動費の使途公開や廃止を求めているが、岸田首相は「政治活動の自由に関わる問題だ」として見直しに慎重だ。

 だが、自民党の政策活動費は年10億円前後に上る。巨費の使途を伏せたままで国民の理解が得られるのか。少なくとも支出項目の公開には応じるべきだろう。