東日本大震災から13年が過ぎた。しかし、事故を起こした東京電力福島第1原発の廃炉作業は思うように進んでいない。
津波によって電源が喪失し、1~3号機で原子炉の炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機では水素爆発が発生した。
政府と東電は、2051年までに廃炉を完了するという工程表を掲げる。現段階では、作業を進めるうえで必要な、処理水の海洋放出が始まったばかりだ。
通常の原発とは異なり、事故原発の廃炉は困難を極める。溶け落ちた核燃料が固まった「燃料デブリ」や、大量のがれきの処理が必要だからだ。
最難関とされるのが、計880トンに上ると推計される燃料デブリの取り出しだ。21年までの開始を目指していたが、今も見通しが立っていない。
放射線量が非常に高く、人が近づけない。遠隔操作での処理が必要となるが、原発内の状態を把握しにくく、ロボットの開発にも手間取っている。
東電は、3度の延期を経て、今年10月までに試験的な取り出しに着手する予定としているが、全体については方法も含めていまだに検討段階にある。
海外でも、過去にメルトダウンを起こした原発の廃炉作業は難航している。1979年に事故が発生した米国のスリーマイル島原発では、燃料デブリの一部が残されたままだ。旧ソ連のチェルノブイリ原発は、事故から40年近くたった現在も、鋼鉄製のカバーで覆われているだけだ。
福島第1原発の工程表は、事故後9カ月で策定されて以降、骨格部分は見直されていない。多くの専門家が、当初から計画の実現可能性に疑問を呈していた。
原発の状況は予断を許さない。昨年、1号機の土台が大きく損傷していることが分かった。再び大地震が起きれば、施設が壊れ、放射性物質が拡散する恐れがある。
政府と東電は、廃炉計画の前に立ちはだかる困難な現実を直視しなければならない。見通しが立たなければ、地元住民の不安は解消されず、帰還も進まない。
どのような「廃炉」を目指すのか。最終的な形と、その道筋を示す責任が、政府と東電にはある。