「私は被災者ではありません。ですが何年か後、何日か後に被災する1人かもしれません」
そう語りかけるのは、高校生の語り部です。
震災から13年。東日本大震災の経験をどう伝え続けていくかが各地で課題となるなか、震災の経験のない若い世代がいま動き始めています。
「来館者がゼロになるかも」伝承施設の危機感
施設の代表を務め、震災で中学1年生の息子を亡くした丹野祐子さんは「私たちがここで活動を続けているということを知らない方がまだたくさんいる。来館者が少なければ伝える機会も少なくなる。震災から時間がたつにつれて、あの日のことをみんなが忘れていくのが当たり前で、来館者がゼロになることはもしかしたらあすかもしれない」と話していました。
動き始めたのは、若い世代
冒頭で「私は被災者ではありませんが何年か後、何日か後に被災する1人かもしれません。あなたもそうかもしれません」と発言し、防災について考えて欲しいと訴えました。
託された言葉を
そのうえで、話しを聞いた被災者たちから託された言葉として、「祈念碑の『あなた』は、今後災害が起こった時、逃げる私たちのことを指しています。10年以上たっても家族を亡くした被災者の後悔は消えずに心の奥底に根付いています。全員が生き残ってやっと幸せを感じることができるのです」と訴えました。
板谷さんに妻が震災で行方不明になった経験を伝えた男性は、「自分事として捉えて語ってくれたことに感謝している。直接、被災した人は年月の経過とともに少なくなっていくので、若い人たちにこれからも語り継いでいってほしい」と話していました。
板谷さんは「聞いた人たちから心に響いたと言ってもらえて、自分の語りが人に届くのだと実感することができた。これからも多くの方に話を聞き、語り部として成長していきたい」と話していました。
“評価する”6割に
被災地に住む人たちに行ったNHKのアンケートでも、震災を経験していない人たちが活動することを「とても評価する」と答えた人が27%、「ある程度評価する」が35%と、評価するという回答があわせて62%にのぼりました。
理由について複数回答で聞いたところ、
「震災の経験や教訓を未来に伝え続けていくことは意義があるから」が79%、
「今後被災地でも未経験者が増えていくから」が56%などとなりました。
東日本大震災から13年 岩手 宮城 福島 1000人アンケート
1人1人にそれぞれの人生があった
伝えることは絶対に役に立つ
3月16日には高橋さんとともに講演に参加して、語り継ぎを行う予定で、それに向けて準備を進めています。
地元の静岡も南海トラフの巨大地震で大きな被害が想定されていて、被災地だけでなく地元でも震災を経験していないからこそ同じ世代の人たちに命を守る大切さを伝え続けたいと考えています。
堀口さんは、「経験した人が語り続けるのは年齢などもあり難しいと思うが、大切な経験を伝えることは今後の震災で絶対に役に立つと思う。つらい経験を『つらかったね』で終わらせるのではなくて、日本に住む以上、震災は繰り返されると思うのでこういう話を思い出して、早く逃げようとか、深刻な被害にならないような助けにつなげたい」と話していました。
引き継がれる安心感
また、自身の経験が語り継がれる高橋さんは、「私が話すということは、両親が生きていた証しだと捉えていて、私が話せなくなってしまったら終わってしまう。それが引き継がれることですごく安心感を覚えている。語り継いで伝えていくことはとても大事だと思うので、どんな形でも伝え続けてもらえるのはとてもうれしいことだ」と話していました。