世論調査はどう行われているのか 北の大地で“世論”と向き合うオペレーターたち(2024年3月10日)

また従来は自宅にある固定電話だけを対象にしていた時代が長く続いたが、携帯電話の普及とそれに伴う固定電話を持たない家庭が増えたことを踏まえ現在は固定電話50%、携帯電話50%の割合で調査が行われている。このためオペレーターも固定電話チームと携帯電話チームの二手に分かれて作業を行う。

午後2時 調査開始。

職場の空気は一変した。約60人のオペレーターは電話へのアクセスに注力する。

オペレーター➀「お休みのところ失礼致します。私はTBSテレビの調査を担当します・・と申します。ただいま週明けのニュースで放送するため、18歳以上の有権者の皆様を対象に電話による世論調査を行っております」

世論調査にとって第一の課題は相手の信頼を勝ち取ることだ。

いきなりの電話で「世論調査に協力を」と言われても「本当だろうか」と疑念を持つ人は多くいるだろう。また週末は多くの人々にとっては憩いのための貴重な時間となっている。実際に、今回の調査でも「いまから買い物に出かけなければいけないから」「いま孫たちが家に来ているので切らしてもらいます」などという回答が見られた。こうした厳しい状況下でオペレーターは限られた短い時間で正確に趣旨を伝え、協力をお願いすることになる。

オペレーター(2)「5分ほどで終わりますので是非、協力をお願い致します」

限られた時間で当方の趣旨を理解してもらうためにはやはり熱意と誠意が必要だ
多くのオペレーターのやりとりを傍らで聞いて、改めて原点を感じることができた。

また時間が経過するとともに固定電話と携帯電話のそれぞれの調査特有の難しさが浮き彫りとなってきた。

■「運転中」「18歳未満」には速やかに調査を終えなければならない

オペレーター(3)「ご家庭の電話ではないのですね。大変失礼しました」

世論調査は先述のようにコンピューターにより無作為に抽出された電話番号にかけることになる。このためレンタカー会社や銀行などの事業所にかかることもある。

また固定電話の場合はすぐ留守録に応答がない場合も多々あり、なかなか当人までアクセスすることが難しい。

一方、携帯電話にも課題がある。

固定電話と比べて当人へのアクセスは比較的容易だが相手がどう言った状況で電話に出ているかわからない。注意しなければいけないのは相手が運転もしくは鉄道などで移動している状況だ。

また18歳未満の中学生や小学生の携帯にかかってしまうこともある。こうした状況に遭遇した場合には速やかに調査を終えなければならない。

固定電話・携帯電話それぞれの困難を乗り越えてサンプルは少しずつ積み上がっていく。

調査の集積の状況はおよそ1時間単位で更新されオペレーターたちがわかりやすいようにホワイトボードに記載される。

「午後3時現在 固定48  携帯48」
「午後5時現在 固定127 携帯172」

午後2時の開始から3時間で固定・携帯合わせて約300の回答を得たことになる。

■「AIで代替できない分野」世論調査を支えるのはオペレーターの気配り

世論調査の屋台骨を支えているのはやはりオペレーター1人1人の相手に対する気配りだ。

オペレーター(4)「あと少しで調査終わりますからね。もう少しお付き合い願います」

10を超える設問に答えるのも大変だが、それを丁寧に聞き出すことも大変な作業だ。また、内閣や政党の支持など政治という堅い印象の分野の質問ということから答えようと意欲のある人でも「大丈夫かしら」と尻込みする場合が多い。

オペレーター(5)「設問を用意しております。その中からご自分のお考えに最も近い設問を教えて下さい」

またベテランのオペレーターは相手の緊張感をほぐすため様々な工夫を凝らす。
あるオペレーターは朗らかな軽快なリズムで別のオペレーターは自分が日常使っているイントネーションを用いて相手に語りかける。

そして大半のオペレーターに共通して言えることだが、それぞれが間合いを計りながら相手が答えやすいペースで問いを繰り返す。

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