世論調査が各社で違うのはなぜ?朝日新聞と産経新聞の調査を両紙の記者が比較・解説!選挙ドットコムちゃんねるまとめ(2024年3月5日)

YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」では、毎週選挙や政治に関連する情報を発信中です。 2024年3月2日に公開された動画のテーマは……最新世論調査チェック!各社ごとに違うのはなぜ? ゲストに朝日新聞政治部記者の今野忍氏と産経新聞政治部記者の水内茂幸氏をお招きし、新聞各社の世論調査の違いについて語っていただきました。 世論調査はなぜ各社で異なる?低支持率でも岸田政権が維持できている理由とは?

このトピックのポイント】

・新聞各社で調査手法は大きく変わらないが、さら問いの有無などによって数字が変化している ・岸田政権の弱点は岸田総理のタフさゆえに役割分担ができていないこと ・岸田政権のターニングポイントは4月の衆院補選

各社世論調査 2024年2月の結果

2月の世論調査で、産経新聞内閣支持率が5.2ポイントと大きく下落しています。水内氏はこの結果について「他紙に比べると今の政権に強めの数字が出る傾向はある」としつつ、今回の大幅下落で他紙と同水準の支持率になったとコメントしました。 その要因として、水内氏は自民党派閥の政治資金パーティーの影響に言及しました。

水内氏「自民党が飽きられていて、その象徴みたいな形で岸田さんも飽きられている部分が出ているのかなと思います」 今野氏は水内氏の「産経は政権に強めに出る」という意見に対し「安倍政権時代に比べたらそうでもなくなった感じがする」とコメント。安倍政権時代は岩盤支持層の存在によって支持率が安定していた点に言及しました。

実際、安倍政権が支持率20%台まで下がったことは一度しかありません。それに対し、岸田政権は20%台が定着しつつあります。

本来であれば政権交代が起きてもおかしくない数字ですが、野党第一党である立憲民主党の支持率が低いため、その実現には至っていません。 今野氏「下手したらこのまま選挙やっても、立憲と維新で競い合ってくれれば漁夫の利で自民党が勝つかもしれないっていう不思議な状況が今起きてますよね」

今回、朝日と産経は内閣支持率自民党支持率どちらも同水準の結果となりましたが、そもそも集計方法に違いはあるのでしょうか。 水内氏によると、産経新聞ではオペレーターによる聞き取りを行っており、地域や年代、固定電話と携帯電話で偏りが出ないようにバランスを取っているとのこと。この手法はどの新聞社でも大きくは変わらないのでは、とコメントしました。 今野氏は毎日新聞時事通信の数字が低く出る傾向がある点に言及。調査方法が異なる可能性があるとしました。

さらに、日経新聞は質問の回答に対してさらに質問する「さら問い」を実施しているため、数字に違いがでると今野氏。「どちらとも言えない」との回答に対し、「しいて言えば?」とさら問いすることで、政権が上向きな時は支持率が高くなる傾向があるとのことです。

現状、各社とも内閣支持率自民党支持率ともに低迷が続いています。この数字を見て2009年の政権交代の時のようだという自民党議員もいるようですが、今野氏は野党の支持層が上がっていない点が異なると指摘します。 その状況について水内氏は「岸田さんにとってはラッキー」とコメント。他の野党に政権担当能力がないと思われている証拠であり、岸田おろしが起きない証拠でもある、と語りました。

また、岸田総理にかわるような存在が自民党内にいないこと、岸田総理がショーアップされすぎていることも岸田おろしが起きない理由として挙げました。 さらに、水内氏は岸田総理のタフさにも言及。水内氏の「殴られても殴られても倒れ切らない感じはありますよね」というコメントに今野氏も「痛点がないんですよ!痛みを感じない」と同意。

派閥解消と政倫審出席に踏み切ったのもこのタフさゆえなのかもしれません。 アメリカでトランプ大統領復活の可能性もあるなか、国のリーダーとしてはこのタフさが生きる可能性もありますが、そのタフさゆえに欠点もあります。 それについて水内氏は「周りに役割分担しない」と分析。孤軍奮闘になりがちな点を指摘しました。 今野氏もそれに同意。台湾有事やアメリカ大統領選挙、日本経済など他に目を向けるべき状況がある中で政倫審への出席といった内向きの問題に総理自ら対応している点に言及しました。 安倍政権の時の菅官房長官のような政権を支える存在がいないことが岸田政権の危うさだと両氏は指摘。 その存在となりうる人物として政策のブレーンである木原誠二氏の名前が挙がるものの、閣僚経験はなく、裏金問題に関して安倍派5人衆に働きかけるほどの力はまだない、と今野氏は分析しました。

今後、岸田政権が浮揚するにはどのようなルートがあるのでしょうか。 水内氏は今年解散があるのかどうかが重要なポイントになるとコメントします。9月の自民党総裁選の前に岸田総理としては解散を打ちたいところですが、支持率があまりに低ければ自民党内でもそれを阻止する動きが出てくる可能性はあるとのこと。

そういった点で支持率は今後も注目ポイントと言えそうです。 今野氏は「全ての試金石は4月の3補選」とコメント。島根1区、東京15区、長崎3区で予定されていますが、今野氏は長崎は不戦敗、東京も無所属候補の推薦に留まるのではと予想します。

その上で保守王国と言われる島根で落選すれば、総裁選前に解散できなかった菅前総理の二の舞になりかねません。それを避けるために補選前に解散に踏み切る可能性もあると今野氏。

また、岸田総理の一か八かの大勝負ということになるかもしれません。 水内氏「今野さんも俺も含めて大変なことになるとは思いながらも、こういうのもちらっと見てみたいなっていう気もしますね」 今野氏「いやあ、俺夏休みはちゃんと休みたい……」

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