トランプ vs バイデン 計158歳、両者不安含みの再対決へ どちらが勝っても「残り1期4年」だが(2024年3月6日『東京新聞』)

 
 5日の「スーパーチューズデー」の結果により、11月の大統領選で、再び対決することが確実となった共和党のトランプ前大統領(77)と民主党現職のバイデン大統領(81)。トランプ氏が強気な言動を繰り返す背景には務めても「残り1期4年」に限られる憲法上の制約がある。一方、2期目を狙うバイデン氏には支持者離れの死角が見えてきた。(ワシントン・浅井俊典)

◆トランプ氏 史上2人目「不連続2期」大統領なるか

 「初日だけ独裁者になる」。トランプ氏はホワイトハウスに戻った際の対応についてこう述べたことがある。大統領令の連発などを通じた権力乱用を示唆した発言をして物議を醸した。
 合衆国憲法は、大統領職は2期までと定めている。このため、すでに1期務めたトランプ氏が再選された場合、やりたいことは4年以内に成し遂げる必要がある。
共和党の候補者指名が確実になったトランプ前米大統領=AP

共和党の候補者指名が確実になったトランプ前米大統領=AP

 大統領の任期はもともと、初代ワシントンが務めた2期8年が慣例だった。独立の英雄でもあるワシントンは、3期目の出馬を固辞。英国王の専制に抵抗して独立した歴史を踏まえ、専制的な為政者を生まないための判断だったとされる。
 この慣例を破ったのは第32代フランクリン・ルーズベルトで、大恐慌や第2次世界大戦を理由に4選を果たし、4期目の途中に急死した。ルーズベルトの死後、政権の長期化は専制支配を招くとの批判が強まり、1951年に成立した憲法修正22条で3選以上の禁止が明文化された。
 トランプ氏は1期4年を務め、2020年大統領選でバイデン氏に敗北。今回再選を狙うが、同様に「連続でない2期」を務めた大統領は、19世紀末に第22、24代を務めたクリーブランドしかいない。
 過去には大統領の任期延長を求めて修正22条を廃止しようとする動きもあったが、憲法修正は、米議会上下両院の3分の2以上の賛成を得た後、全米各州で承認も得る必要があるなどハードルが高く、一度も認められていない。
 トランプ氏は任期の延長には言及していない。

◆バイデン氏、アラブ系住民らが抗議の「白票」呼びかけ

 バイデン氏はこれまで勝利を重ねているものの、複数の州で白票に当たる「支持候補なし」が一定数を占めた。パレスチナ自治区ガザ情勢でイスラエルを擁護するバイデン氏への抗議票とみられ、本選に向けた懸念要素となっている。
 AP通信によると、5日の中西部ミネソタ州予備選は開票率98%で、バイデン氏の得票率が70.6%だったのに対し、「支持候補なし」が18.9%で約4万5000票を占めた。
5日、米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで、取材に応じるバイデン大統領=AP

5日、米東部メリーランド州ヘイガーズタウンで、取材に応じるバイデン大統領=AP

 同州ではアラブ系住民やリベラル色の濃いプログレッシブ(進歩派)の民主党議員が、バイデン氏への抗議として「支持候補なし」に投票するよう呼びかけていた。
 南部ノースカロライナ州予備選でも開票率97%で「支持候補なし」が12.7%。東部マサチューセッツ州予備選も開票率83%で、支持候補なしがバイデン氏に次ぐ9.4%となった。
 バイデン氏陣営の広報担当者は米メディアに対し、「バイデン氏は中東における暴力に終止符を打ち、公正で永続的な平和を実現するという目標を共有しており、そのために絶え間ない努力を続けている」と説明した。
 アラブ系有権者による抗議票の呼びかけは、2月27日の中西部ミシガン州予備選で始まり、同州では10万人以上が「支持候補なし」に投票する事態となった。
 バイデン氏は2期目を務めた場合、任期終了時に86歳となることから、加齢による心身の衰えの懸念も強まっている。