物流2024年問題 安定輸送へ危機感共有を(2024年3月6日『新潟日報』-「社説」)

 これまでと同じようには荷物を運べなくなる可能性がある。トラック業界の取り組みだけで乗り越えられる課題ではない。

 物流という生活基盤を安定させるために、社会全体で危機感を共有したい。

 政府が進める働き方改革の一環として、4月からトラック運転手の残業時間の上限が年960時間に規制される。

 過重な労働が是正されることは望ましい。一方で輸送能力の低下が懸念されている。物流の2024年問題への対策が急がれる。

 残業規制に従えば、1人の運転手が運べる荷物が減ることになる。対策しないと24年度に輸送量が減ると試算される。

 県内の運送会社からは、運ぶ量が減れば経営は苦しくなりかねないと苦悩する声が聞かれる。運転手に支払う給与が減り、人手不足が進む懸念もある。

 消費者側は、宅配や引っ越しで希望する日に荷物が届かなかったり、生鮮品が手に入りにくくなったりすることが考えられる。

 物流が著しく停滞すれば、インターネット通販をはじめとする消費の冷え込みを招きかねない。

 持続可能な物流を探る必要がある。それには、便利なサービスが、長時間労働など運転手の相当な負担の上に成り立ってきた現実を見据えることが欠かせない。

 荷物の仕分けや陳列など契約にない作業を迫られ、対価を得られない下請け業者もいるという。

 政府は閣議決定した2024年問題への対応策で、荷物の積み込みまでトラックが待機する「荷待ち」時間を削減するよう荷主に促し、最大100万円の罰金を科す規定を設けた。労働時間を抑制する狙いがある。

 元請け業者に下請け状況が分かる管理簿の作成も義務付けた。低賃金の一因となる多重下請けの弊害を是正するためだ。

 これにより政府は24年度に10%程度の運転手の賃上げを目指す。

 効率よく荷物を運ぶ仕組みづくりにも知恵を出し合いたい。

 業種の垣根を越えた連携も有効といえる。コンビニと飲料メーカーが配送トラックを共同利用するといった動きがある。輸送力を補い合うことができるという。

 高速道路では、総重量8トン以上の中大型トラックの最高速度が、現行の時速80キロから90キロに引き上げられる。

 警察庁有識者検討会は、交通安全に影響はないとの提言をまとめた。輸送効率の向上が期待される一方、現場には「運転手側に負担を押しつける」との声もある。

 消費者は再配達を減らす努力が求められる。玄関先に荷物を置いてもらう「置き配」も手間を減らす一助になる。

 配送のスピードや、送料の安さを求めすぎていないか。消費者側の意識も問われる。