眠りの効能(2024年3月6日『新潟日報』-「日報抄」)

 眠りの効能は数多く知られている。新型ウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの効果を高める可能性もある。接種後、睡眠時間が長いほどウイルスに対する抗体が多くできるそうだ。こんな研究成果が、先日の本紙に載っていた

▼以前接種した際、数時間後に熱が出て、こんこんと眠り続けたことを思い出した。わが体内に抗体が増える効果はあっただろうか。発熱にはうんざりしたが、眠りのおかげでワクチンの効果が向上したとすれば納得するしかない

▼インフルエンザなど従来型のワクチンでも、睡眠時間が長いほど抗体価が上昇するという研究が知られている。逆に言えば、ワクチンの効果を得るには十分な睡眠が欠かせないということだ

▼こんな研究もある。健康な男女の鼻腔(びくう)に、風邪を引き起こすウイルスの一種ライノウイルスを大量に注入した。睡眠時間が7時間以上だったグループの感染率が18%だったのに対し、5時間未満のグループは50%に上った(前野博之「成功する人ほどよく寝ている」)

▼良質な睡眠は免疫力も高めるようだ。この季節、受験生をはじめ風邪をひいてはいられないという人は多い。風邪の予防はまず睡眠から、ということのようだ。寝室や寝具の環境を整え、しっかり眠ることも試験勉強と同じくらい大切なのかもしれない

三寒四温。まだまだ寒い日は多いが、遠くから春の足音が聞こえてくる。「暁を覚えず」というほど、ぐっすりと熟睡できる「春眠」の季節はすぐそこだ。