下請けへの不当減額、公取委が厳格姿勢 日産に勧告方針(2024年3月4日『日本経済新聞』)

 
公正取引委員会日産自動車に対し、週内にも下請法違反で再発防止を勧告する方針を固めた。日産は下請け企業に支払う代金を不当に減らし、減額分は過去数年間で約30億円に上るとされる。人件費や原燃料費が上昇する中、中小企業が賃上げするためには適切な価格転嫁が重要になる。公取委は大企業への監視を強めている。

関係者によると日産は2021年1月から、自動車のエンジンやバッテリーなどに使われる部品の製造を委託している下請け企業に対し、事前に取り決めた金額から数%減額して代金を支払っていた。減額分が数年間で10億円を超える下請け企業もあった。

 
こうした商慣行は「割戻金」などと呼ばれ、日産と下請け企業との間で長年続いてきたとみられる。下請け企業側は取引の打ち切りを恐れ、減額を拒否できなかった可能性がある。

下請法は下請け企業に責任がある場合を除き、当事者間の合意があっても発注後の代金から減額することを禁じている。約30億円の減額は1956年の下請法施行以来、最高額になる見通し。

日産は「一部取引において公取委から指摘・調査を受け、最終的な結果を待っている」としており、減額分の全額を取引先に返金した。

中小企業の賃上げ実現には、発注元からの支払価格が引き上がることが重要だ。公取委は価格転嫁を巡る監視を強化している。2022年12月には下請け企業などと価格転嫁の協議を十分にせず取引価格を据え置いたとして、デンソーや佐川急便など13の企業・団体の名前を公表した。

23年11月にまとめた指針では人件費などの価格転嫁に向け企業が守るべき行動例を示した。発注企業が受注側と十分な交渉をせずに支払価格を長年低く据え置くと、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用や下請法違反に当たる「買いたたき」行為になる恐れがあるとした。

公取委はこれらの取り組みを通じて、下請け企業との取引を自主的に見直すよう大企業に促す。下請け先の中小企業の交渉力を高め、公取委などに違反行為を通報しやすくさせるといった狙いもある。