立民・山井議員が衆院で「フィリバスター」 2時間54分の最長演説をした理由とは…(2024年3月1日『東京新聞』)

立憲民主党山井和則衆院議員が1日午後の衆院本会議で、小野寺五典衆院予算委員長(自民党)の解任決議案の趣旨弁明演説を2時間54分にわたって行った。2024年度予算案の衆院採決を遅らせるための「フィリバスター」(議事妨害)とみられ、衆院事務局によると、衆院本会議での演説としては、記録が残る1972(昭和47)年以降で最長となった。(宮尾幹成、佐藤裕介)
資料を手にする山井和則衆院議員

資料を手にする山井和則衆院議員

◆大量の資料を取り出し…


大きな紙袋を持って登壇した山井氏は、中から大量の付せんが貼られた資料の山を取り出してから演説をスタート。ゆったりとした口調で、自民党安倍派の幹部が出席する政治倫理審査会(政倫審)と同じ時間帯に予算委を開催しようとした小野寺氏の委員会運営を「予算の審議を軽んじているだけでなく、裏金問題隠し、裏金問題幕引きのそしりを免れない」と断じた。
その後も、自民党議員の名前を1人ずつ挙げて指摘されている問題を説明したり、1990年代前半の金丸信自民党副総裁(当時)を巡る政治資金規正法違反事件などにも触れたりして、演説を続行。時折、議場を見渡したり、議員の賛同を求めたりして、時間を稼いだ。あまりの長さに、終盤には声がかすれていた。

フィリバスター 海賊を意味するオランダ語に由来。特に米上院で、少数派が多数派から譲歩を引き出すために長い演説で審議時間を引き延ばす行為を指す表現として用いられている。

◆予算採決のデッドライン


今回、山井氏が長時間の演説を行ったのは、2024年度予算案の衆院採決を遅らせるためだ。
国の予算案は憲法の規定で衆院の議決が優越されるため、仮に参院の審議が長引いても30日で自然成立する。自然成立のデッドラインは 3月2日のため、山井氏は1日の予算案採決を阻むことを狙ったとみられる。
資料を手に演説する山井和則衆院議員

資料を手に演説する山井和則衆院議員


短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)では、「山井議員」がトレンド入りし、「すごいぞ こんなの初めて見た!」「予算の強行採決を阻止するフィリバスター 自民から一本取りましたね!」といった反応があった。
これまでの最長は、2018年7月に立民の枝野幸男代表(当時)が安倍内閣不信任決議案の提案理由説明で記録した2時間43分だったが、これを11分上回った。
参院では、2004年に民主党(当時)の森裕子氏が厚生労働委員長解任決議案の趣旨弁明で3時間1分にわたる演説をした記録が残る。
審議時間を引き延ばす手段には、議員が1人ずつ記名式で投票する場合に、故意に投票箱までの移動に時間をかける「牛歩戦術」もある。自民党の長期政権が続いた「55年体制」時代には社会党(当時)や共産党などがしばしば用いたが、近年はれいわ新選組などの少数政党を除き、あまり使わなくなっている。