「警視庁公安部が実験データ隠蔽」 大川原化工機が控訴理由書を提出(2024年2月29日『毎日新聞』)

東京都と国が控訴したことを受けて記者会見を開いた大川原化工機の大川原正明社長(中央)ら=東京・霞が関の司法記者クラブで2024年1月11日午前11時29分、巽賢司撮影


 軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われ、後に起訴が取り消された化学機械製造会社「大川原(おおかわら)化工機(かこうき)」(横浜市)の社長らが東京都と国に賠償を求めた訴訟で、大川原側が29日、控訴審での主張をまとめた控訴理由書を東京高裁に提出した。「警視庁公安部が立件に不利な実験データを隠蔽(いんぺい)した」などとし、事件は捏造(ねつぞう)されたと訴えている。

 社長らは2020年3月に逮捕・起訴され、東京地検が21年7月に起訴取り消しを公表した。1審・東京地裁は23年12月、都と国に計約1億6200万円の賠償を命じ、大川原側、都、国のいずれも控訴した。

 

 1審判決は、公安部と地検が、同社の装置が輸出規制に該当するかを確認する実験を尽くさなかったとして捜査を違法と認定した。

 大川原側は控訴理由書で、1審段階では証拠として提出されていなかった新たな実験データなどを入手したと主張。実験データは立件に不利に働く証拠で、公安部はこれを削除して捜査を進めていたとしている。


 さらに捜査段階で公安部の見立てに沿った説明をしたとされる有識者4人がいずれも大川原側には異なる見解を示したとし、「1審判決は捜査機関の違法性を過小評価している」とした。1審段階で5億円超としていた請求額は、1審判決を踏まえて約2億5000万円に改めた。

 都と国も29日に控訴理由書を提出したが、詳細を明らかにしていない。警視庁は「1審の判断に重大な事実誤認等があると考えられることから、控訴審で必要な主張を行う」、法務省は「コメントを差し控える」としている。【巽賢司】