裁判官の〝人権〟を守るため…報復におわす「捨てぜりふ」には1・5倍くらいの追加刑罰でもよいのでは?(2024年2月28日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

石橋和歩被告

 

■2月28日 「オレが出るまで待っとけよ」とは恐ろしい。26日、東京地裁での差し戻し控訴審で石橋和歩被告(32)が裁判官らに吐いた捨てぜりふだ。神奈川県の東名高速で一家4人が乗ったワゴン車をあおり運転で停止させ、後続トラックの追突で夫婦を死亡させた「自動車運転処罰法違反」での懲役18年の1審判決が支持されたからだった。

「運転と被害者らの死傷に因果関係はない」と弁護側は主張したが、パーキングエリアでの駐車方法を注意されて逆上し執拗にあおりを繰り返した末、2人が命を落とした。懲役18年でも軽いと感じる人も多いだろう。揚げ句に全く反省の色がない脅迫まがいの暴言は神経を逆なでする。

 捨てぜりふといえば、市民襲撃など4つの事件で、21年8月の1審で死刑判決を受けた北九州市指定暴力団工藤会」の野村悟総裁の一言が強烈だった。裁判長に向かって「あんた、生涯このことで後悔するぞ」。来月12日に2審の判決が言い渡されるが、仕事とはいえ裁判官も言われっ放しでは、たまったものではないだろう。

 折から法務省は、刑務官が受刑者に暴行するなど不祥事を招く一因とされる受刑者の呼び捨てを全面的に廃止すると発表した。4月から名字に「さん」で呼ぶという。受刑者を「お前」とか「懲役」などと呼ぶのは確かに不適切だが、いきなり「さん」付けというのも場所柄、違和感は拭えない。

 人権にうるさい時代だが、そこまで配慮するなら公平に願いたい。裁判官の〝人権〟のためには、反省もせず報復をにおわす「捨てぜりふ」は懲役刑なら判決の1・5倍くらいの刑罰を追加すべきでは…。懲役18年なら27年。それでも「待っとけよ」と言うのか。(今村忠)