ブロッコリーの大躍進(2024年2月28日『宮崎日日新聞』-「くろしろ」)

 ブロッコリーは食卓に欠かせない野菜だ。しかし漫画家で食のエッセーが豊富な東海林さだおさんの「シウマイの丸かじり」という本に「ブロッコリーはなぜ暗いか」という一文があって、随分と手厳しい。

 まず「一体植物のどの部分なのか」「分かりにくい野菜」として、樹木のようなうっそうとした外見が暗くて深い樹林を思い起こさせるという。さらに「なんだか陰気」「気が利かなそう」「動きにぶそう」など容赦ない。味わいも「印象はまことに弱い」と断じる。

 東海林さんのエッセーは、擬人化した対象を自虐的にいじるところにおかしさがあるので、関係者はあまり怒らないでほしい。後の方ではブロッコリーが付け合わせとして弁当に彩りを添えたり、栄養が豊富だったりする美点を挙げて、さらに人気が出る提案をしている。

 名誉回復を図るわけではないが、ブロッコリーが出荷量増加を評価され2026年度から「指定野菜」に加わることになった。指定野菜とは消費量が多い野菜で、国が主導して価格や出荷の安定を図っている。1974年のジャガイモ以来、52年ぶりの追加というから大躍進を遂げたといっていい。

 これまでは指定野菜に準じる特定野菜だったが、格上げによってキャベツやキュウリなど野菜界の重鎮と肩を並べることになった。本県では生産量は多くなくとも、家庭菜園での栽培はよく聞く。苦手の人もいるが、工夫すればいろいろな料理に合う野菜だ。