地方政治とカネ 国政を反面教師に襟正せ(2024年2月26日『西日本新聞』-「社説」)

 国民のひんしゅくを買った自民党派閥による政治資金の不正問題は、政治不信をまたも増幅させた。裏金や使途不明金の病根を絶つには、政治資金の流れを国民の目にさらす必要がある。

 地方の政治家にも同じことが言える。知事や市町村長、県議、市町村議は国会議員の不祥事を反面教師にして、襟を正してもらいたい。

 裏金の温床になった政治資金パーティーは、九州の首長や地方議員が代表を務める政治団体も開催している。「セミナー」や「県政報告会」などと題し、収入が1千万円を超える場合もある。

 派閥主催のパーティーは、会場の収容人数をはるかに超えるパーティー券を販売していた。会場に行くつもりのない企業や個人のパーティー券購入は、かねて「形を変えた献金」と指摘されている。

 こうしたパーティーは地方の政治団体にも見られる。違法でないにせよ、一般常識から懸け離れた開催形式は見直すべきだ。

 政治資金収支報告書の修正も珍しくない。派閥の裏金問題が急拡大した昨年12月は、九州の知事や市議が県選挙管理委員会に修正を届け出た。借入金や政党からの寄付収入の記載漏れがあったという。

 国会では政治資金収支報告書に不正があった場合、会計責任者だけでなく、政治家も連帯責任を負う連座制の導入が議論されている。地方政治家も緊張感を高めたい。

 政治資金規正法は、法の趣旨について「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」と第1条に規定している。

 これに沿って、政治資金収支報告書を誰もが手軽に閲覧できるネット公開は必須である。九州7県で唯一遅れていた福岡県も遅まきながら、昨年秋に2022年分のネット公開を始めた。

 かつて、地方議員に支給される政務活動費(旧政務調査費)のいいかげんな使い道が各地の議会で発覚した。趣味の本やおやつのように、住民から見れば政務と無関係な支出がまかり通っていた。

 それが改まったのは、全ての使途の領収書を収支報告書に添付し、公開する制度が整備されたからだ。有識者や公募に応じた市民が報告書を審査し、改善点を提起する自治体もある。

 目的外支出を防ぐには、やはり情報公開と外部の目による監視が有効だ。

 この際、選挙に絡む不透明な政治資金も一掃したい。

 国政選挙の地元対策として地方議員にカネがばらまかれる実態は、19年の参院選広島選挙区における大規模な買収事件であらわになった。

 政党が国会議員に支給する政策活動費は使い道が明らかになっていないが、一部はこうした選挙対策に使われていたとみられる。

 地方の政治家も、カネのかからない政治活動と選挙を追求すべきだ。