古里を守る仕組み(2024年2月25日『山陰中央新報』-「明窓」)

アクシスの坂本哲代表取締役


 寝袋を抱えて過疎化や少子高齢化にあえぐ中山間地域を歩いた時期がある。先輩記者に手を引かれ、尻をたたかれながら一緒に目指したのは、一言で言えば「古里をどう守るか」だった

▼「それが分かればノーベル賞」と冗談も出る難題。1年半にわたる取材で迷ったとき、原点に返って見詰めたのは、そこに暮らす人たちの「思い」だった

▼あれから四半世紀。不便なら便利なところに移り住めばいい、という極論に対抗する絶対的な理屈と方法論は、まだない。2008年をピークに日本の総人口が減少に転じ、「人口減少」問題が過疎地だけのものではなくなる中で「東京一極集中」が加速。コンパクトシティーや「小さな拠点」の考え方も行政効率を考えればやむなしと思いつつ、反発したい気持ちもあった

▼「生まれたところに住み続けられるのが一番いい。だとすれば、そこで生きていく『生き方』を確立させないといけない」。スーパー閉店が相次ぐ鳥取県内で、官民連携で「買い物弱者」を支える仕組みをつくろうと「デジタルとリアルを融合したサービス」を提供するアクシス鳥取市)の坂本哲代表取締役から先日取材で聞いた言葉に、わが意を得たり、と膝を打った

▼デジタルと聞いただけで苦手意識が先に立つが、使わされるのではなく、使うのだ。古里を守る手段として。まだまだ課題は多くとも、これが一つの答えかもしれない。(吉)