働きながら年金を受け取るとき、年金の一部または全額が支給停止になる場合があります。
【就業率の推移】働くシニアは年々増加。2022年の就業率はどれくらい?
支給停止が始まる基準となる金額を「支給停止調整額」といいますが、2024年4月よりその額が50万円に引き上げられます。 本記事では、2024年度の支給停止調整額について解説します。
これからのシニアの働き方についても紹介しますので、老後の生活設計をするときの参考にしてください。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
定年後も働く人が増えている
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳から69歳の人の就業率は2022年度時点で50.8%です。 定年を65歳とすると70歳未満の約半分の人が、定年後も仕事を続けていることになります。 また、70歳から74歳の人についてもおよそ3人に1人が仕事をしており、高齢者の就業率は年々上昇しています。
在職老齢年金制度と支給停止調整額の改定
高齢者の就業率の高まりとともに、年金をもらいながら仕事を続ける人も増えることが予想されます。 そこで気になるのが、在職老齢年金による年金の支給停止です。 在職老齢年金の仕組みと2024年度の改定について解説します。
●在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、働きながら年金を受け取る場合、年金の支給額を減額(支給停止)する仕組みのことです。 2024年3月まで年金が減額されるのは次に該当するケースです。
・基本月額と総報酬月額の合計額が48万を超える 基本月額とは、老齢厚生年金の報酬比例部分(加算を除く年金)の月額です。 総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額と直近1年間の標準賞与額の1/12を合計した金額です。
少しわかりにくいですが、年収1000万円以内の人なら、年収を12か月で割って概算できます。 年金の支給停止の基準となる金額(2023年度は48万円)を「支給停止調整額」といい、年金額の改定と併せて毎年改定(前年と同じケースもある)されます。 在職老齢年金によって減額される金額(支給停止額という)は、次の通り計算します。
・1か月の支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2 老齢厚生年金の報酬比例部分の年額が120万円(基本月額10万円)、標準報酬月額が36万円で年1回の賞与が120万円(総報酬月額相当額は46万円=36万円+120万円÷12か月)の場合、支給停止額は次の通りです。
・1か月の支給停止額=(10万円+46万円-48万円)÷2=4万円 上記ケースでは、年金は1か月あたり4万円減額されることになります。
●2024年度の支給停止調整額が引き上げ
2024年度の年金額は、物価の上昇率などにより前年度から2.7%引き上げられます。 同時に、在職老齢年金の支給停止調整額も48万円から50万円に引き上げられます。 前述のケースで支給停止額を計算すると次の通りです。
・1か月の支給停止額=(10万円+46万円-50万円)÷2=3万円 基本月額や総報酬月額相当額が同じ場合、2024年4月より支給停止額は1万円少なくなります。
これからのシニアの働き方
シニアの働き方は、資産の状況や老後生活に対する考え方、健康状態、生活水準などにより人それぞれ大きく異なります。
ただし、平均寿命が伸び「人生100年時代」と呼ばれるように老後期間が長くなるにつれて老後の資金を心配する人が増えています。
この不安を解消する方法の1つが、定年後もできるだけ長く仕事を続けることです。 在職老齢年金によって年金が減額されるケースもありますが、仕事をつづけた方が減額されても総収入は多くなります。 また、厚生年金に加入することで将来の年金額が増えます。
さらに、給与収入があれば年金を繰下げして年金額を大幅に増やすことも可能です。 また、アルバイトやパートなどで月5万円や10万円くらいの収入を得ることも老後対策として有効です。
年金だけでは不足する生活費をアルバイトなどで補うことができれば、貯金の取り崩しを抑え老後資金不足への不安も少しは解消できるでしょう。
在職老齢年金制度のまとめ
在職老齢年金とは、働きながら年金を受け取る場合、年金の支給額を減額する仕組みのことです。 年金の支給停止の基準となる支給停止調整額は、2024年4月より48万円から50万円に引き上げられ支給停止額は少なくなります。
シニアの働き方は人それぞれですが、老後の資金対対策の1つとして、定年後もできるだけ長く仕事を続けることは効果的です。 在職老齢年金による年金の減額があっても、在職中の収入と将来の年金額が増えるというメリットが期待できます。
参考資料
・厚生労働省「令和6年度の年金額改定について」 ・内閣府「令和5年版高齢社会白書(概要版)」 ・日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
西岡 秀泰
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