自民党の麻生太郎副総裁と、菅義偉前首相が22日夜、東京都内の日本料理店で会食したことが憶測を呼んでいる。岸田文雄政権を支える「主流派」の麻生氏だが、首相が「派閥解散」を打ち出したことで関係が悪化しているとみる向きもある。
一方、「非主流派」の菅氏だが、派閥解消の方向性は首相と同じだ。複雑な関係の2人が「ポスト岸田」をにらんで動き出したのか。
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ともに首相経験者の麻生氏と菅氏は、派閥のパーティー収入不記載事件を受けて岸田首相が立ち上げた党政治刷新本部で最高顧問を務める。
22日の会食では、党改革や今後の政権運営をめぐり、意見を交わしたというが、気になるのは方向性が異なる2人の会談の中身だ。
麻生氏は先月27日、福岡県飯塚市での国政報告会で、麻生派(志公会)を政策集団として存続させる意向を表明した。
これに対し菅氏は同23日、「党として、方向性は一体であった方が国民から理解される」と述べ、派閥存続に否定的な見解を示した。
第2次安倍晋三政権当時、麻生氏は副総理、菅氏は官房長官を務めて内閣を支えたが、政治家一族出身の麻生氏と、「たたき上げ」の菅氏は歩みも異なる。
2人の〝密談〟をどうみるか。
政治評論家の有馬晴海氏は「『天敵』とみられている両氏が会うことは、次期衆院選や、総裁選に向けて党が切羽詰まっている状況を示している。
麻生氏は、岸田首相に副総裁にしてもらった恩もあり、岸田批判の急先鋒である菅氏にクギを刺したのではないか。
一方、菅氏は首相を下ろされた恨みもある。敵方の様子見か、あわよくば『ポスト岸田』の提案が出ると考えて、麻生氏と会ったのではないか」と話す。
政治ジャーナリストの安積明子氏は「『ポスト岸田』を見据えた動きの可能性もある。主流派の麻生氏だが、離脱者が続出する茂木派と連携しても、多数派を得にくい状況で求心力の維持が難しい。
『ポスト岸田』に麻生氏は上川陽子外相、菅氏は河野太郎デジタル相を推しているとの見方もあるが、方向性が違うなかでも共通項を見いだそうとしているのではないか」との見方を示した