政倫審開催へ 実態解明、意味ある一歩に(2024年2月23日『河北新報』-「社説」)

 裏金づくりは一体、いつ誰の指示で始まり、派閥や議員は何に使ってきたのか。これまで自民党によるアンケートや聞き取り調査でも一向に進まなかった実態解明に向け、意味のある一歩としなければならない。

 関係者に説明責任を尽くさせ、「政治とカネ」を巡る不祥事を根絶する制度改正につなげることが急務だ。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会が28、29日に開かれる見通しになった。

 安倍派の座長だった塩谷立氏、事務総長経験者の松野博一西村康稔、高木毅の各氏に加え、二階派事務総長だった武田良太氏が出席する。

 開催準備が進む参院政倫審には、安倍派参院側会長だった世耕弘成氏が出席の意向だという。

 2022年までの5年間に6人が政治資金収支報告書に記載していなかった裏金は計約5800万円。党全体の不記載額5億7900万円の約1割に過ぎない。

 22年まで3年分の収支報告書に不記載があった自民党議員は安倍、二階両派だけでも衆参合わせて81人に上る。6人だけでは到底、十分とは言えない。

 特に派閥領袖で5年分の不記載額が3526万円で最多だった二階俊博氏や、安倍派「5人組」の一人で5年間で2728万円を記載していなかった萩生田光一氏の出席は必須だろう。

 岸田文雄首相は「説明責任を果たすよう促す」と繰り返してきた。より多くの議員を出席させるよう指導力を発揮しなくてはなるまい。

 議員の政治的、道義的責任を問う政倫審は1985年、ロッキード事件を機に設けられた。だが、疑惑の渦中にある議員本人の申し出か、委員の過半数の賛成が必要とされるため、開催例は多くない。

 議員本人の了解がない限り原則非公開とされることもあって、一方的な弁明で、説明責任のアリバイづくりに利用されたケースもある。

 立憲民主党は公開を求めているが、衆院政倫審に出席する5人は非公開で応じるとしている。

 「記憶がない」「秘書が」などの常とう句で都合の悪い質問をかわす不誠実な振る舞いが繰り返されぬよう、今回はぜひ国民の目に見える形で開催すべきだ。

 自民党が公表した安倍、二階両派議員らへの聞き取り調査結果は、安倍派の裏金づくりが20年以上前から行われていた可能性に触れたが、具体的な経緯は依然やぶの中だ。

 裏金の使途も懇親費用、手土産代といった項目が並ぶだけで内容は分からない。

 民間ではあり得ぬ規範意識の低さとずさんさは目を覆いたくなるほどだ。税務署の確定申告窓口で急増するクレームは、裏金議員全員への憤りの発露だ。国民の怒りを決して甘くみてはならない。