過去のお粗末な司法判断が影響、衆院東京15区補選の妨害行為 選挙制度が崩壊した国家の「末路」とは…見返したい2作品(2024年5月4日『夕刊フジ』)

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デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング
 
4月28日に投開票が行われた衆院東京15区補選をめぐって各候補者への妨害行為が相次いだことが大きな話題となった。
 
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【写真】タスキ姿で現れた根本候補が乱入、音喜多氏に対して紙を向けていた
 
今回のような異常な事態を生み出す原因となったのが、安倍晋三元首相への左翼によるヤジ攻撃だったのではないか。
重大なのは、安倍氏への演説妨害を、裁判所が「表現の自由」と認めたせいで、公然たる妨害行為が野放しとなっている。警察が及び腰になるのは、わが国のお粗末な司法判断が影響しているためで、同様の事態が続けば、まともな選挙活動ができなくなってしまうだろう。
そこで、この機会に見返してもらいたいのが、「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」と「時代革命」というドキュメンタリー映画だ。
両作品には、2019年に香港を揺るがした200万人に及ぶ「民主主義を守れ」と訴えたデモが映し出されるが、人々の必死な叫びを圧殺する香港警察の暴力行為がすさまじい。
香港ではこれ以降、それまで何とか維持してきた民主的な選挙制度が事実上消滅してしまったと言っても過言ではなく、今では中国共産党のお墨付きの人物しか議員にはなれない。
そもそも世界の共産党は、選挙に基づく議会制度を「資本家による階級支配を覆い隠すもの」として否定してきた。ロシア革命時の武装蜂起や中国革命でも繰り返された粛清などの民主主義否定の歴史を想起すべきだ。
東京15区で起きた公然たる妨害活動は、民主的な選挙制度を根底から崩してしまいかねない危険な行為である。選挙制度が崩壊した国家がどのような道をたどるのか。
ぜひ紹介した2本のドキュメンタリー映画を見返してもらいたい。(瀬戸川宗太)
 
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解説
香港ポップス界のスーパースター、デニス・ホーが、アーティストから民主活動家へと変貌していく様を長期密着取材で追ったドキュメンタリー。2014年、警官隊の催涙弾に対抗し、雨傘を持った若者たちが街を占拠したことから「雨傘運動」と呼ばれる香港の民主化デモ運動に、香港を代表するスター、デニス・ホーの姿があった。同性愛を公表する彼女は、この雨傘運動でキャリアの岐路に立たされていた。彼女は中心街を占拠した学生たちを支持したことにより逮捕され、中国のブラックリストに入ってしまう。スポンサーが次第に離れていき、公演を開催することが出来なくなった彼女は、自らのキャリアを再構築するため、第二の故郷であるモントリオールへと向かう。( 映画.com)
2020年製作/83分/G/アメリ
原題:Denise Ho: Becoming the Song
配給:太秦
劇場公開日:2021年6月5日
 
 
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解説
2019年に香港で起きた民主化デモの様子を捉えたドキュメンタリー。
2019年、中国当局の締め付けによって自由が失われゆく香港で、民主化を求める大規模デモが起きた。発端となったのは、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例改正案」が立法会に提出されたことで、参加者たちは同案の完全撤回や普通選挙の導入などを5大要求として掲げ、6月16日には香港の人口の約3割を占める約200万人にまで参加者数が膨れ上がったという。
警察との衝突が激しさを増していく最前線の様子を中心に、リーダー不在ながらもSNSを駆使して機動的に統制されていた実態や、立法会、地下鉄駅、香港中文大学、香港理工大学など各地のデモの様子を約180日間にわたって記録し、大きな運動のうねりを多面的に描き出す。( 映画.com)
2021年製作/158分/G/香港
原題:時代革命 Revolution of Our Times
配給:太秦
劇場公開日:2022年8月13日