国の飲酒基準に居酒屋は「お通しでほぼ終わり」の懸念 ノンアル開発強化で適正飲酒開拓も(2024年2月19日『産経新聞』)

 
東京都内の飲食店(ロイター)

飲酒に伴うリスクを周知し健康障害を防ぐため、厚生労働省は初の指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が19日に公表された。リスクを高める1日当たりの飲酒量の例示で、男性はビールの中瓶2本、女性は1本と酒好きにはやや厳しめの設定だ。飲食店からは利用客の飲み控えを懸念する声が上がる一方、ビール業界はノンアルコール飲料の開発など今後を見据えた取り組みを強化している。

女性はロング缶1本

ガイドラインで示された基準の飲酒量は、人によってはお通しの段階で、ほぼ終わっちゃう。消費量に極端な影響が出なければいいけど…」

東京都文京区の居酒屋経営者は、指針に理解を示しつつも需要減につながることを心配する。

指針では、アルコール量を飲酒量に換算した1日当たりの基準量が、男性の半分となる女性で見ると、アルコール度数5%のビールでロング缶1本だ。12%のグラスワインとなれば2杯で〝超過〟する。

適正飲酒は世界の流れ

国内では少子高齢化や若者のアルコール離れが進み、出荷量や成人1人当たりの消費量などが減少傾向にある。飲食や酒類などの業界にとって厳しい状況にある上、欧米をはじめ適正な飲酒に向けた取り組みは世界的な流れになりつつある。

キリンホールディングス(HD)の磯崎功典社長は「(欧米に比べ)今まで日本は寛大だった」とし、今後も指針の内容は今以上に厳しくなっていくと予測。同社が掲げる社会課題の解決を重視した経営の「一丁目一番地にあるのがアルコール問題」と述べ、対応強化を進める考えを示した。

サントリーHDの新浪剛史社長も、ノンアルコールや低い度数の商品など、消費者に選択肢を提供していることを強調。適正飲酒を呼びかけるのは「企業の社会的責任」と訴えた。(福田涼太郎)