地下シェルター 数値目標掲げ整備進めよ(2024年2月15日『産経新聞』-「論説」)

 
ウクライナの首都キーウの中央駅にある地下シェルター(共同)

外国からのミサイル攻撃などに備え、政府は3月末をめどにシェルター(避難所)整備に関する基本方針を策定する。

ウクライナを侵略するロシアは弾道・巡航ミサイルや自爆型の無人機(ドローン)で攻撃を続けている。多くのウクライナ国民はシェルターや建物の地下室、地下鉄構内へ避難している。

北朝鮮や中国、ロシアは多くのミサイルや攻撃用ドローンを有している。日本が平和を望んでも外国が攻撃してくるケースに備えておかねばならない。日本も国民の命を守るシェルターの整備が喫緊の課題だ。

基本方針の策定に合わせ、いつまでに、どのような地域を対象に、どれくらいの収容人数を確保するのか、シェルター整備の数値目標を示してもらいたい。それをもとに政府と自治体が整備を進める必要がある。

13日の衆院予算委員会林芳正官房長官はシェルター整備の必要性を指摘し、構造などに関するガイドラインを策定すると表明した。

平成16年施行の国民保護法に基づき、全国には令和4年4月現在、ミサイルの爆風などから身を守る「緊急一時避難施設」に指定されたコンクリート造りの建物などが5万2490カ所ある。だがその大半は、地上の学校校舎や公共施設である。

これでは国民の命は守れない。地下空間を利用したシェルターを設置すべきだ。

欧米などでは、米ソの冷戦時代にシェルター整備が進んだ。スイスやイスラエルなど人口当たりの普及率が100%の国もある。

普及率85%超のフィンランドでは一定規模以上の建物にシェルター設置を義務付けている。整備促進には民間の協力が欠かせない。海外の取り組みを参考にしなければならない。

東京都は港区の都営地下鉄大江戸線麻布十番駅構内に、本格的な地下シェルターを整備する方針だ。地下約40メートルにある駅の防災倉庫(広さ約1480平方メートル)を改修し、食料や水などを備蓄して長期間避難できるようにする。全国の自治体はみならってもらいたい。

また、本格的施設でなくとも地下に逃げ込めれば相当数の人の命が助かる。アプリによる地下駐車場への誘導など避難態勢の整備も進めてほしい。