「脚本家・相沢氏は“言われたとおり、ちゃんとやった”」セクシー田中さん騒動を風化させてはいけない理由(2024年2月18日)

 

 

【写真】渦中の『セクシー田中さん』美人脚本家・相沢友子氏のシンガーソングライター時代

 

脚本家・相沢氏が謝らない気持ちも理解できる

 もしここで相沢氏が「SNSで芦原先生を侮辱したこと」のみについて謝ったとしても、ネット民は拡大解釈して「ほら、やっぱり脚本家がヤバかったんだ、すべては脚本家が悪かったんだ!」と猛バッシングすることは目に見えています。売れっ子とはいえ、相沢氏はフリーランスですから、弱い立場です。本当のことを知られるとまずい人達にとっては、「脚本家が暴走して、原作をぶっ壊した」とすべての責任を相沢氏になすりつけて、とかげのしっぽ切りできたら好都合でしょう。そうならないための自衛が「簡単に謝らない」ことで、これはフリーランスでないとわからない感覚かもしれません。

 

相沢氏は「言われたとおり、ちゃんとやった」

 相沢氏と言えば、漫画をドラマ化する際に筋書きを大きく変えることから、彼女を原作クラッシャーと呼ぶ人もいるようです。しかし、これも大きな誤解と言えると思います。クリエイターは自分の思ったとおり、自由に創作していいんだと思っている人もいるかもしれませんが、プロデューサーの方針や許可の下に創作するわけです。原作がぶっこわされたように見えたとしたら、それはプロデューサーがそれでいい、もしくはそれがいいと判断したというわけで、相沢氏は「言われたとおり、ちゃんとやった」と言えるのでは、ないでしょうか。

「セクシー田中さん」の版元である小学館は会社としてのコメントを避けていますが、現場の編集者たちは、プチコミック公式サイト内で「第一コミック局編集者一同」として、コメントを発表しています。引用を含めてまとめると、以下の二点になると思います。

・メディア担当者と編集者がテレビ局の意向を伝えて、出来上がったのはドラマ版『セクシー田中さん』である

・「著作者人格権」という、著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を広げることが、再発防止において核となる

 芦原先生はドラマ化に対し、いくつかの条件を提示していましたが、これはワガママではなく、著者として当然の行為であることであるとして芦原先生の名誉を守り、編集者たちもきちんとやるべきことをしたという主張だと私は理解しました。

 それでは、脚本家も出版社も「ちゃんとやった」のに、どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。脚本家に指示を出せる立場であり、出版社とやりとりをし、かつドラマの最高責任者であるプロデューサーは何らかコメントを出してしかるべきと思いますが、おそらくこのままだんまりを決め込んで、人の記憶が薄れるのを待っているのではないでしょうか。

 現場で仕事をしていた相沢氏や小学館編集者のコメントを読んで、私はこの問題は今後も起きる可能性がある。そして、今後追い詰められるのは原作者だけでなく、編集者である可能性もあるなと私は思いました。なぜなら、性善説に頼りすぎているというか、「話が違う」時に対する備えがないからです。 

 

私たちは気を抜くとヤバいことをする


 今回のことを契機に、『海猿』(小学館)の作者・佐藤秀峰氏をはじめとした人気漫画家たちがメディアミックスにおいて、原作者がどれだけ軽んじられているか内情を告白しています。

 経験者たちの苦渋の告白により、今後、漫画がドラマ化されるときは、原作者は遠慮せずにいろいろな条件を癒えるようになるでしょう。それは当然の権利なわけですし、喜ばしいことですが、原作者とテレビ局の間で調整をする編集者の負担はかなり増えることでしょう。

 特に問題なのはテレビ局との間に「話が違う」ということが起きた時。編集者は原作者を守るために間に入るでしょう。しかし、実際にドラマを作るのはテレビ局ですから、いろいろな理由をつけて思い通りにすることは不可能ではないでしょう。こういう時、編集者はテレビと原作者の間で板挟みになることが予想されますし、原作者との信頼関係にヒビが入ってしまう可能性があります。こうなると、真面目に取り組む編集者ほど心身ともに追い込まれてしまうのではないでしょうか。また人を介してやりとりすると、微妙に話のニュアンスがずれていったり、意図的に話をねじまげる人がいないとは言い切れない。そういったことを防ぐためには、やりとりを可視化させることがポイントになるのではないでしょうか。

 具体的に言うと

・ドラマ化にあたって罰則も明記した契約書を弁護士の指導の下に交わすこと

・出来上がった脚本を原作者に見せて、ドラマ化の許可をもらうこと(原作者も許可するかどうかの判断がしやすくなるでしょうし、脚本家に対する誹謗中傷を防ぐ効果もあります。この方法をとるなら、未完の作品はドラマ化の対象外となります)

・原作者の代理人を編集者にするのではなく、原作者本人が代理人を立てて、原作者の利益を守ることに専心すること

 などが思いつきます。

 私は人は誰しもヤバいものとだと思っています。善良な人でも、大組織に属していると会社の名前を武器に居丈高にふるまったり、権力を手にするとパワハラやセクハラを行うこともある。ですから、「私たちは気を抜くとヤバいことをする」という前提で、約束が守られなかったら、違反があったらどうするのかに備えてしっかり契約し、役割分担をはっきりさせなくてはいけないのではないでしょうか。かわいそうだった、さみしいなど、お涙頂戴の言葉で風化させていいことでは、決してないと思うのです。

 

仁科友里 (@_nishinayuri) / X

<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」

 

 間違いだらけの婚活にサヨナラ!

 

サイゾーウーマン』『週刊女性』『週刊ポスト』などにタレント論、女子アナレビューを寄稿する気鋭のライター・仁科友里がお届けする、これまでの常識を覆す婚活指向南本です

。 「に服を買っている」「自分のために磨いて習い事をしている」「料理上手がオトコ心を真剣に考えている」「出会いの数を増やせば理想の相手に出会えると思っている」

― ―貴女は、オンナの思い込みで突き進む「間違いだらけの婚活」をしていませんか? 婚活に必要なのは、理想のオンナを目指して自分を磨くことではありませ


。会社員時代から男性を深く観察してきた結果、考え方が出し、すべての男性に共通する「ある法則」。この法則を知れば、男性の本音と行動パターンが
分かるように、格上のオトコを転がし、へ導くことも夢じゃないのです。

モテない、魅力がない、オトコ運がない。そう決めつける前に
、この本でオトコについて学びながら、婚活にチャレンジしてみましょう!