「母が助けてくれたのかな」一緒に居間にいて救助された娘(2024年2月18日『NHKニュース』)

石川県輪島市の水上とし子さん(88)は先月の地震で、倒壊した自宅で亡くなりました。
当時、一緒に居間にいて救助された娘の滝川久子さん(66)は「母が助けてくれたのかなと思います。これからは輪島がどうやって復興していくのか、見届けていくのが私の務めだと思っています」と話しています。

地震が発生した翌日の先月2日、輪島市町野町の倒壊した住宅から、この家に住んでいた水上とし子さん(88)が遺体で見つかりました。

地震が起きたのは、ふだんは1人で暮らしていた水上さんが、正月で能登町から帰省していた娘の滝川久子さんと1階の居間でくつろいでいる時でした。

最初の揺れはすぐ収まったものの、2回目の揺れで家の壁が倒れ、2人は倒壊した家の下敷きになりました。
滝川さんは倒壊した建物の中から「助けて」と叫び、近所の人に救助されましたが、水上さんは埋もれてしまい、助け出すことができませんでした。
滝川さんはその夜、近所の人たちと地区の建物に避難して一晩を過ごしましたが、母親の最悪の事態を覚悟したと言います。
当時のことについて滝川さんは。

娘 滝川久子さん
「家の下敷きになったときから、母は息ができていないだろうと思いました。それでもせめて遺体だけは家から出してあげたいという思いでした。家と一緒になって私を助けてくれたのかなと思います」

翌日に遺体で見つかった母親。
死因は低体温症でしたが、顔には自宅の倒壊で圧迫されたあとが残っていました。

母 水上とし子さん

水上さんは兼業農家だった夫を手伝って、葉たばこを栽培したりサザエ漁をしたりするなど一生懸命働いてきました。
10年前に夫が亡くなったあとも家の裏の畑で野菜や果物を育て、近所の人にあげるのが趣味だったといいます。

「年を重ねた母親と一緒にいる時間を増やしたい」
離れて暮らす滝川さんはそう考えて、看護師としての病院での仕事を週5日から週3日に減らしましたが、その直後に地震に襲われました。

滝川さんは今後、輪島市の実家があった場所に新しい家を建てて暮らしたいと考え始めています。

滝川さん
「母は私が悲しんでいるほど悲しんではいなくて、天国で父ともう一回新たな人生を過ごしていると思います。輪島がどうやって復興していくのか、見届けていくのが残された私の務めだと思っています」

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