警視正中死亡 問われる監視態勢 「検証必要」と専門家(2024年2月18日『毎日新聞』)

 複数の女性に性的暴行を加えたとして起訴された中国四国管区警察学校広島市)の警視正、岩本幸一被告(58)が勾留中の警察署で自殺を図ったとみられる問題。広島県警による留置管理態勢は適切だったのか、検証が求められる。

 県警は18日未明に記者会見。巡回の頻度や規定通りの監視態勢だったかなどと質問が相次いだが、留置管理部門トップの大野勝俊課長は「調査中」「改めて説明する」と繰り返した。

 各警察では留置管理に関する規定を設け、容疑者の言動や体調などに応じて警戒度を設定している。最も注意が必要な留置者には24時間態勢で対面監視するなどの対応が取られることがある。県警は岩本幸一被告を警戒度の高い留置者に指定していたが、大野課長は「自殺の兆候があったのかは調べている最中だ」との説明にとどまった。

 留置場で容疑者らが自殺を図ったケースは過去にもあり、約1年半前には大阪府警でずさんな実態が明らかになった。保険金目的で養母を殺害した疑いが持たれ、府警福島署に勾留されていた男性容疑者(当時28歳)が死亡した。

 この容疑者は取り調べ中の雑談で「逃走を考えている」と漏らし、死亡直前に遺書とみられる便箋が見つかっていた。福島署は巡回の頻度を強化することにしたが、実際は大幅に間引いて実施。巡回したように偽装していた。容疑者の私物保管庫を一度もチェックしておらず、点検簿を偽造していたことも発覚した。

 留置業務を巡っては自殺防止を徹底する一方で、留置者のプライバシーの保護も重要になる。警察行政に詳しい京都産業大の田村正博教授は「具体的な自殺の恐れがあったのなら常時監視もあり得るが、最近では難しくなっている」と指摘。ただ、死亡した結果は重大だとしたうえで「留置場や取り調べで本人の変化は読み取れなかったのか。きちんと調べて明らかにすべきだ」と話す。【井村陸、土田暁彦】