文の終わりを示す句点の「。」(マル)が日本文に使われ始めたのは江戸時代前期だという。それまでも区切りを示す記号はあったが、1636(寛永13)年の製版本に「、」や「。」がみられる。一般に普及したのは明治以降だった(「てんまる」山口謠司著、PHP新書)
▲当たり前に文につけている句点を巡る議論である。チャットやLINEなどでのやり取りの際、マルをつけて「はい。」「了解。」などと連絡すると、若い世代が「怖い」「返信を拒絶されている」と感じるとの指摘がある。その名もマルによる「マルハラスメント」。ネット番組で注目され、メディアニュースや漫才コンビの爆笑問題が取り上げるなど話題を呼んでいる
▲チャットであっても、文の区切りに句点は不可欠だと感じる人は多いはずだ。ハラスメント呼ばわりはさすがに行き過ぎにも思え、実際に威圧感を与えているかも疑問だった
▲ところが、試しに10代の女性に聞いてみたところ「チャットで、冷たい印象の『マル』はあり得ない」という。文末には「!」や絵文字をつけるそうだ。実際にそんな声を聞いて驚いた
▲少し不安になったところで歌人、俵万智さんによる最近のX(ツイッター)での投稿を知った。句点への逆風を巡り「この一首をそっと置いておきますね」と前置きしつつ、「優しさにひとつ気がつく ×でなく○で必ず終わる日本語」
▲そう。やはり句点を悪者にしてはいけない。ぶっきらぼうでないメッセージを「。」で結べばいい。
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(2024年2月17日『福島民報』-「あぶくま抄」)
「結婚式を挙げることになりました つきましては 皆様により一層のご指導を賜りたく」。案内状の見本だが、どこか違和感がある。「。」「、」がない。晴れの場だけに「切る」「区切る」を避ける縁起担ぎだ
▼そもそも、日本語の句読点は歴史が浅いという。和歌には必要なかった。「五七五・七七」のリズムがあるためだ。NHK大河ドラマで話題の源氏物語にも存在しない。この記号は、明治時代の教育制度開始で生まれた。意味を正確に伝える狙いだったらしい(山口謠司著「てんまる」)
▼マルハラスメントを知らねば、今や周回遅れか。LINE(ライン)で、若者は句点に恐怖を覚えるそうだ。「体調が優れずバイトを休む」と伝えた際、返信は「了解です。」。最後の「。」が威圧感を生み、距離を置くとの意味に受け止められる。短文投稿に文末を示す目印が付くため、拒絶感が際立つとの指摘がある。若い世代の国語は、一周回って紫式部の時代に先祖返りしているよう
▼親近感を伝える絵文字を置けば、「年配者の象徴」と一歩引かれる。さて、小欄をどう終えようか。筆者はおじさん世代。原則通りに。決して、冷たいと受け止めないでね「。」
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万智さん「マルハラ」「おばさん構文」に秀逸の短歌で私見「優しい日本語大事ですね」と共感の声(2024年2月8日)
歌人の俵万智さんが8日、自身のX(旧ツイッター)を更新。話題となっている「マルハラスメント」について、歌人らしく一首を投稿し、絶賛の声があがっている。
6日に産経新聞が「LINE(ライン)などSNSで中高年から送信される『承知しました。』など文末に句点がつくことに対し、若者が恐怖心を抱く『マルハラ(マルハラスメント)』が注目されている。若者は文末にある句点が威圧的に感じ、「(相手が)怒っているのではないか」と解釈してしまう傾向にあるという。」などと伝え、「マルハラ」が話題となった。
それを受け、俵さんは「句点を打つのも、おばさん構文と聞いて…この一首をそっと置いておきますね~」と前置きしてから、「優しさにひとつ気がつく ×でなく〇で必ず終わる日本語」と、短歌をアップした。
この投稿には、「優しい日本語大事ですね」「まちさん ステキな歌をありがとうございます。『、』『。』があるから、ホッとするし、テンポもいいのに」「おじさん構文、おばさん構文と揶揄(やゆ)する見下し文化 句読点にまでケチつけて異常」「やさしい日本語を正しく使っていきたいです」「流石です。本来はマルハラなんて煽らずにこのような意見を流すべき」など、投稿から3時間あまりで200件以上のコメントが寄せられ、3万件以上の「いいね」がつけられてた。
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文末の句点に恐怖心…若者が感じる「マルハラスメント」 SNS時代の対処法は(2024年2月8日『産経新聞』)
LINE(ライン)などSNSで中高年から送信される「承知しました。」など文末に句点がつくことに対し、若者が恐怖心を抱く「マルハラ(マルハラスメント)」が注目されている。若者は文末にある句点が威圧的に感じ、「(相手が)怒っているのではないか」と解釈してしまう傾向にあるという。専門家は、メールに長く親しんできた中高年とSNSを駆使する若者との間をめぐり、SNS利用に対する認識の違いが影響している指摘する。
「テンションが分からない」
マルハラとは、「マルハラスメント」の略称。「承知しました。」「はい。」「連絡ください。」など、中高年から送られてくるメッセージの文末に句点がついていることに対し、若者が距離感や冷たさを感じて恐怖心を抱くことを指している。
文末に句点がついている中高年からのメッセージに対し、若者はどのように感じているのか。会社員の23歳女性は「読みやすくするための句点でルールだと理解しているが、区切られてシャットアウトされている印象がある。会話が続けにくい」。千葉県内の大学に通う21歳の女性は「テンションがわかりにくく、リアクションがないので怖い感じがする」と違和感を口にする。
文末に「笑顔」の絵文字を
若者のSNS利用に詳しいITジャーナリストで成蹊大客員教授の高橋暁子さんは「中高年世代はガラケー世代で、主にメールを使用していたため文章が長く、読みやすくするために句読点が多くなる傾向にある」とし、「一方で、若者はリアルタイムでのやりとりが当たり前となっており、チャットのようなやり取りを行う。短めの文章で句読点を打つタイミングで送信するため、句点を使用する機会が少ない」と分析する。
さらに、「若者同士の会話では、句点は怒っていることを意味する際にも使用される。そのため、若者は普段あまり見かけない文末の句点に怒っているのではないかと怖さや威圧的に感じているのでは」と指摘する。
中高年にとっては、仕事などを通じて若者とLINEでやりとりする機会もあるが、ハラスメントとして認識されないためにはどうすればいいのか。高橋さんは「(若者とやり取りをする際は)句点を除いてあげる。代わりに、『!』や笑顔の絵文字を1つ付けるといい」とアドバイスしている。
LINEを巡る世代間ギャップの背景