呆れた自民の「裏金」調査報告書…反省ゼロ、中身は安倍派幹部への愚痴だらけ(2024年2月16日『日刊ゲンダイ』)

 
安倍派幹部にくだくだと恨み節(塩谷座長=前席左)/(C)日刊ゲンダイ
安倍派幹部にくだくだと恨み節(塩谷座長=前席左)/(C)日刊ゲンダイ
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 一体、何を調べていたのか。自民党は15日、派閥パーティーの裏金事件を受けて実施した党幹部による聞き取り調査の結果を公表した。2週間近くもかけたのに、中身はスカスカ。なぜ、平然と裏金づくりが行われてきたのか、カネを何に使ったのか──、肝心の実態解明からは程遠い内容で、匿名による安倍派議員の発言録は幹部への不平・不満のオンパレードだ。

 ◇  ◇  ◇

 調査の対象は、安倍派と二階派の現職議員や選挙支部長、各派閥の幹部を含む91人。聴取項目は、2020~22年分の収支報告書の訂正内容や、派閥からのキックバックの存在を認識していたか否か、受領した資金の管理方法などだ。

 全20ページの報告書のうち何より目立つのは、3ページにわたって記された安倍派議員たちの幹部への恨みつらみの言葉である。聞き取りに対し、議員がこぼした愚痴の数々が、匿名ながらくどくどと書き連ねてある。

〈派閥なら派閥らしく、トップが腹を据えるべき〉〈派閥の若手議員よりも重鎮議員の方の危機意識が低かった〉〈派閥の上に立つ人間が責任をとらないといけないと思う〉

 さらに、22年の安倍派パーティーの直前に、会長だった安倍元首相が「キックバック中止」を指示。その後、撤回された経緯を巡っては、こんなボヤキ節も。

現金隠しには追徴課税がスジ

愚痴ばかりが目立った(聴き取り調査報告書)/(C)日刊ゲンダイ
愚痴ばかりが目立った(聴き取り調査報告書)/(C)日刊ゲンダイ
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 さらに驚くのは、裏金の管理方法についてまとめた項目だ。受領した議員全85人中、39人が「現金」、12人が「現金及び銀行口座」。現金の保管場所として「事務所の金庫」「鍵の掛かった事務所の引き出し」「専用の箱(物理的なボックス)」「引き出しの小さい金庫」を例示し、まるで脱税社長の「現金隠し」さながら。

 また、キックバックを受け取った85人中、31人が「(カネを)使用していなかった」と回答。その理由に「気持ち悪いと思っていたので使わなかった」との声も紹介している。仮に、受領した裏金を金庫に入れたまま使わなかったとしたら、「所得隠し」「脱税」ではないのか。

「意図的に裏金づくりをやっていたわけですから、管理方法が金庫だろうが銀行口座だろうが脱税であることに変わりはありません。世論の批判を受けてか、自民党内で、キックバックを不記載にしていた議員に対し納税させる案が浮上しているようですが、これは脱税を自白したも同然。長年にわたり裏金化していた悪質さに鑑み、税務署は議員に重加算税を課すべき。でなければ、国民は納得しないでしょう」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)

 そもそも報告書は裏金を「還付金」、中抜きを「留保金」と言い換え、反省の色ナシ。裏金議員の愚痴など、誰が聞くものか。改めてキチンと実態を調査し、不正に蓄財していたヤカラに追徴課税を払わせるべきだ。

〈安倍さんが止めると仰ったのに、その後に復活したのだから、その方針を覆した人がいるのではないか〉〈誰がその決定をしたのかについては、誰も語らない〉

〈派閥から記載するなと言われたものを記載するわけがない〉と、派閥側に責任を押し付ける発言もあった。

 見逃せないのは、安倍派の「不記載スキーム」の開始時期に関する記述だ。具体的な時期は〈判然としない〉としつつも〈遅くとも10数年前から行われていた可能性が高い〉〈場合によっては20年以上前から行われていたこともうかがわれる〉と報告書は指摘。十数年から20年前といえば、森元首相が会長を務めていた時期(1998~2000年、2001~2006年)と重なる。だったら、サッサと追加調査を開始。森本人からみっちり事情を聴いて、シロクロつけるべきだ。