経営危機の三井住友建設でクーデター、取締役が三井住友銀に“社長解任”直訴(2024年2月14日)

 

ゼネコン準大手で財閥系の名門、三井住友建設で“クーデター”が勃発した。メインバンクである三井住友銀行出身の近藤重敏社長に、反社長派の取締役が反旗を翻したのだ。反社長派は三井住友銀に社長解任を訴える“連判状”を提出するなど、次期トップを巡る対立は激化している。連載三井住友建設 クーデターの深層の#1では、連判状に名を連ねた取締役の実名に加え、主張の中身を明らかにする。また、前代未聞ともいえるクーデターの全容を示し、同社の深刻なガバナンス不全の実態を浮き彫りにする。

 2024年4月1日をもっての社長交代を行う人事案件について――。

 今年1月、3メガバンクの一角、三井住友銀行の福留朗裕頭取宛てに、そう題した文書が出された。提出主は、同じ財閥グループに属するゼネコン準大手、三井住友建設の取締役である。

 文書には、複数の取締役の署名が記され、三井住友銀出身で、三井住友建設の現社長、近藤重敏氏を“解任”する旨が明記されていた。文書が意味するところは、メインバンクに対する社長解任の事前通告で、“クーデター”の決起宣言ともいえる。

 三井住友建設は経営危機の真っただ中にある。主因が、森ビルが施主の大型プロジェクト「麻布台ヒルズ」超高層マンションである。施工を担う三井住友建設は、度重なるトラブルを起こし、22年3月期と23年3月期に麻布台ヒルズに絡む巨額損失を計上。極めて異例である2期連続の赤字に沈んだ。

 バブル崩壊で経営危機に陥った三井建設と住友建設が03年に合併して誕生した三井住友建設リーマンショックなどの試練を乗り越え、10年代後半には業績は上向いてきていた。だが、麻布台ヒルズでつまずき、財務基盤は大きく傷んだ。大幅遅延している麻布台ヒルズの工事は今も急ピッチで進められているものの、状況は予断を許さない。

 社長降ろしのクーデターは業績低迷のさなかに勃発したのだ。経営執行を監督する役割が求められる取締役が、メインバンクに社長解任を通告するという異例の事態となっている

 クーデターはなぜ起きたのか。ダイヤモンド編集部が入手した複数の内部資料などが指し示すのが、同社のガバナンス不全である。実は、経営危機の引き金となった大型プロジェクトの受注を巡っても、ガバナンス不全が影を落としている。

 まず初回となる本稿では、クーデターの全容を明らかにする『【スクープ】三井住友建設で社長解任の“クーデター”勃発!反社長派の取締役が三井住友銀に出した「連判状」の全容』では、メインバンクに提出された“連判状”に名を連ねた取締役の実名に加え、現社長解任後の後任候補の名前、そして取締役らの主張の中身を明らかにする。

 実は、社長解任を巡る対立が起きた背景には、長年にわたる「仲良しクラブ」化したなれ合い体質も横たわる。クーデターの引き金ともなったとみられる同社のガバナンス不全の実態を浮き彫りにする。