文科相と旧統一教会 盛山氏続投、もはやあり得ぬ(2024年2月11日配信『河北新報』-「社説」)

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求した文部科学相が、その関連団体から選挙支援を受けていたことが報じられた。教団側との「政策協定」と受け取れる推薦確認書に署名したことも指摘される。

 このままでは解散命令請求手続きの公正さにまで疑念が生じかねない。岸田文雄首相は速やかに更迭すべきだ。

 盛山正仁文科相が2021年の衆院選で、教団関連団体から支援を受けていたことを朝日新聞が6日に伝えた。推薦状を手に関係者と納まった写真もあり、事実関係を巡り野党の追及が続いている。

 

 衆院予算委員会での盛山氏の答弁は二転三転している。

 推薦確認書に署名したかどうかについては7日、「サインしたかもしれない」「軽率にサインしたというのはおっしゃる通り」と述べ、「覚えていない」としていた当初の答弁を修正。ところが、8日になると「覚えていない」と答えを逆戻りさせた。

 各種団体からの推薦状は全て破棄していて、推薦団体のリストも作成する余裕がなかったという。

 記憶も記録も無い無い尽くしで、どうやって支援者らの声に応えられるのか。議員としての資質さえ疑われても仕方あるまい。

 自民党が2022年に行った所属議員と教団の接点に関する「点検」には、同年3月の関連団体会合であいさつしたことだけを報告し、推薦状を受け取ったとされる21年の会合への出席や選挙支援については申告していなかった。

 盛山氏は「意図的な虚偽報告ではない」と強調しつつ、きのうになって21年会合への出席を7日に追加報告していたことを明らかにした。

 まさに支離滅裂で、自民党の点検のずさんさも改めて浮き彫りになった格好だ。

 岸田首相は「過去のいかんにかかわらず、現在は関係を一切有していない」と盛山氏を続投させる考えだが、このまま宗教行政の指揮を委ね続けるのは、あまりにリスクが大きい。

 文科省は昨年10月、教団への解散命令を東京地裁に請求し、教団側は争う構えだ。22日には地裁が文科省と教団の双方から意見を聴く「審問」が初めて開かれる。

 教団との関わりで疑念を招くようでは、今後の手続きへの信頼が揺らぎかねない。

 一方、文科相には教団による高額献金被害者を救済する職責もある。救済原資を保全するため昨年成立した特例法は、財産隠しを防ぐ実効性に課題を残していた。

 政府、与党が宗教法人側に配慮したのではないかとの臆測もあっただけに、教団の支援を受けたとされる人物が同法の運用に当たれば、被害に遭った元信者や宗教2世らが反発するのは当然だろう。

 盛山氏が任に堪えないのは明らかだ。もはや更迭をためらう理由はないはずだ。